愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました

「お父さんが紘人にした仕打ちは……事実なんでしょ？」

　振りしぼって尋ねた問いには、しばし間があった。その間、紘人にも伝わるのではないかと思うほど心臓が強く打ちつける。

　ややあって彼が口を開く。

「そうだとしても、愛理は関係ない。真紘だって同じだ」

「関係ないわけないよ！」

　彼の答えに反射的に噛みついた。思わず顔を上げ紘人を見つめる。けれどすぐに目を逸らす。私が感情的になってどうするの。

「俺は……愛理をずっと忘れられなかった。自分の行動を死ぬほど後悔したよ。何度も連絡を取ろうとしたけれど、愛理は仕事をやめて引っ越しまでして……」

　彼をたくさん傷つけたのだと罪悪感で胸が苦しくなる。紘人がそこまで私を想い続けていてくれたなんて思いもしなかった。あのときは目の前の事実にショックを受けて、どこまでも自分勝手で衝動的だったと自身を責める。

　彼に顔向けできなくて、うつむきそうになったが頬に紘人の手が添えられ彼の方を向かされた。

「でも愛理は、その何倍もつらい思いを抱えていたんだよな。別れてからもずっと……。俺が自分のことばかりで、気づいてやれなくて悪かった」

　それは私の方だと言いたいのに、声を出したら涙まであふれそうで、軽く首を横に振るのが精いっぱいだった。紘人はそっと私のおでこに自分の額を重ねる。おかげで私の視界には彼しか映らなくなった。

「今度は愛理を一番大切にする。もちろん真紘も一緒にだ。柏木社長の件は愛理が気に病む必要はない。それに結果的に彼も納得のうえでKMシステムズは俺のものになった」