愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました

第二章 知ったときにはもう遅い

 翌日の午後八時過ぎ、宣伝通り紘人は我が家にやってきた。母がちょうど夜勤なのもあり、私と真紘のふたりで出迎える。

「お疲れさま。忙しいのにごめんね」

「こちらこそ連日、悪いな。これ、真紘に」

 紘人が袋から差し出したのは、布製の絵本だった。小さい子どもに人気の誰もが知る外国の有名なキャラクターのものだ。

「好みがわからなかったから、適当に選んだんだ」

「これ、赤ちゃんはみんな好きだよ。よかったね、真紘」

 真紘は受け取ると、本の端を掴んでぶんぶんと振り回しはじめる。

「ごめん、おもちゃと思っているのかも」

 どう見ても読む感じはしない。中に音が鳴ったり紐がつけてあったりと仕掛けがたくさんあるので、そういう楽しみ方はしそうだ。

「気に入ってくれたならかまわないさ」

 ひとまず上がってもらい、リビングへと促す。スーツをきっちり着ている紘人に対し、私と真紘は夕飯とお風呂をすませている状態だった。今更、パジャマ姿やすっぴんを見られても困る仲ではないが、なんとなく気恥ずかしい。

 夕飯は食べてきたと言う紘人から上着を預かり、コーヒーでも入れようかと尋ねる。

「気を使わなくていい」

「たいした手間じゃないよ」

 苦笑する私に、「それならもらう」と返事があったので、キッチンに歩を進める。

 紘人はネクタイを緩めると、さっそく真紘と向き合っていた。彼の買ってきた本に興味を示す真紘にわかりやすく内容を説明し、それを真剣な面持ちで聞いている真紘の姿に笑みがこぼれる。
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