愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「抱っこ……上手だね」

「そうか?」

 ぽつりと呟くと紘人は真紘の背中をとんとんと優しく叩いた。

「意外と重いな」

「十キロ弱かな。ちょっと大きい方かも」

 母によると、男の子の方が骨張って女の子と同じ体重でもずっしり重たく感じると言っていた。

 そんな会話を交わしながら淹れたてのコーヒーを持っていく。真紘が触わるといけないので、リビングではなくダイニングテーブルのほうにカップを置いた。

「コーヒー入ったよ」

「ありがとう」

 そこで私に気づいた真紘が腕を伸ばして、こちらに身を乗り出そうとしてくる。

「あー。まーまー」

 必死な面持ちに、紘人と顔を見合わせて笑った。

「すごい勢いだな」

「そりゃ、母親だもの。真紘と一番一緒に過ごしているからね」

 紘人から真紘を受け取り、改めて彼を抱きしめる。

「こうして見ると、真紘は愛理によく似ているな」

「そうかな?」

 しみじみ呟く紘人に、わざと真紘と顔をくっつけて彼を見る。

「似ているよ。目元とかとくに」

 柔らかな表情の彼にドキッとし、私は真紘から顔を離す。

「真紘も……紘人に似ていると思う。髪質とか笑ったときの感じとか」

 彼と再会して、今も紘人と真紘が一緒にいるのを見てつくづく思った。

「ん。俺たちの子どもなんだな」

 さりげない切り返しに、真紘を抱きしめる力を強める。
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