愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 けれど真紘の存在があったから元カノだと説明するのはまだしも、わざわざKMシステムズの社長の娘だって江藤さんに説明する必要はある?

「愛理」

 モヤモヤしていたら名前を呼ばれ慌てて顔を上げる。ソファでつかまり立ちをしていた真紘が両手を離して立っている姿があった。

「あっ」

 両手を上げてバランスを取りながら、しっかりと立っている。そのまま一歩踏み出すのかと思ったら、さすがに難しかったのかうしろにすとんと腰を下ろして座った。

 本人はなんでもなかったかのように再びソファに手を伸ばしてつかまり立ちをする。

「今、立ったよね?」

 一連の流れを固唾を飲んで見守っていた私は、紘人の方を見て改めて確認する。

「そうだな。わりと長い間立っていた」

 続けて伝い歩きをしている真紘に視線を戻し、私は喜びを爆発させた。

「すごい! 真紘すごい! 初めて立てたね! すごい!」

 座っているから抑えているが、立っていたら間違いなく飛び跳ねていた。それほどに嬉しい。真紘の成長の瞬間をしっかりと見届けられた。

「紘人が……お父さんがいるから頑張ったのかもね」

 同意を求めるように彼に投げかけると、紘人も笑った。

「そうかもしれないな。真紘、ありがとう」

 当の真紘は立ったことなどなかったかのように、きょとんとした面持ちで必死に伝い歩きをしている。

「なんだか、思った以上に感動したよ」

 紘人が私の方に近づき、しみじみと呟いた。

「そうだね。子どもの成長がこんなにも嬉しくて感動するものなんて思いもしなかった」

 そして、こうして真紘の成長を紘人とよろこびあえるのも幸せだと感じる。紘人は真紘の頭を撫で、次に私の肩を抱く。
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