愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「早く愛理と真紘と一緒に暮らしたい」

「……うん」

 真紘の父親だからといった義務からではなく、彼の願いは本物だ。もう少し紘人と信じてもいいのかもしれない。

 さっきの江藤さんの電話の件はもう気にしないでおこう。紘人が私と真紘との生活を望んで、大事にしてくれているのは事実なんだから。

「柏木社長への挨拶はいつにしようか」

「え?」

 唐突な質問に、一瞬戸惑う。しかし当然だと言わんばかりの口調で彼は続けた。 

「愛理のお母さんには挨拶したけれど、柏木社長にはまだ結婚の挨拶をしていないだろ? 愛理や真紘と一緒に住む前に……少なくともうちの両親がこっちに来る前にすませておきたい。ただ体調もあるだろうから」

 結婚して一緒に住むのなら父への報告も必要だろう。紘人は彼に対する父の仕打ちと私や真紘は関係ないと言ってくれたけれど、本当になにも気にせずいられるほど、割り切れていないのも事実だ。

 とはいえ彼ではなく私がぎこちなく感じてどうするのか。

「私、父に連絡しておくね」

「いや。会社の件でいくつか言伝もあって連絡する必要があるから、俺が段取りをしておくよ」

 迷ったものの忙しい彼に予定は合わせた方がいいだろう。紘人の申し出に素直に任せる。

 いつまでも、私ひとりで気を揉んでもしょうがないよね。

 紘人が前を向いているのなら、私も彼の妻として、真紘の母親として切り換えないと。真紘を抱っこする紘人を見て、不安にも似た消えない翳りを抑え込む。真紘はもちろん紘人も幸せにしたい。彼を傷つけた分、余計にだ。
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