愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
『絶対に許せない相手がいるんだ』

 あんなにも厳しい目でKMシステムズについて調べていた。何年もずっと父が紘人にした仕打ちを明るみにさせるために動いていたのに、私はどこまでも彼を理解していなかった。

 彼に結婚を申し込まれたのも最初から決まっていて、もしも私じゃなくても紘人はおそらく父の娘なら結婚するよう動いていたんだ。それこそ崎本さんみたいに。

『結婚しよう』

 相手が私で、ちょうどよかった? 子どもまでいて、彼の計画は変わってしまったのかな。

 江藤さんには紘人が抱えているものを話せて、協力してもらっていたのに、付き合っているときも今も私は彼になにも本音を打ち明けてもらえていない。私も紘人に本当のことを言えないまま別れを告げた。

 今度こそちゃんと向き合っていこうと思ったのに、最初から私にその資格はなかったの?

 沈みそうになる気持ちを奮い立たせる。紘人がどんなつもりでも、一度彼の本音を聞こう。彼の意志を尊重したい。その結果そばにいられなくなっても、彼が心から私を愛していないとしても、全部受け入れる。……受け入れるしかないんだ。

「たー。あー」

 ベビーカーに飽きた真紘が暴れだし、彼を抱っこして空のベビーカーを押す。一歳がそろそろ見えてきて、おっぱいよりも食べるほうが多くなってきた。日々、成長している彼が愛おしい。

 紘人が私をどう思っていても、彼が真紘を大事にしてくれているのは事実だ。親として真紘を思う気持ちは同じだと思う。だからこそしっかり真紘を守っていかないと。
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