愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 頭がズキズキと痛む。苦しくて息ができない。でも大事なものが手の中にない。私の一番大切な……。

『まー』

「真紘!」

 自分の声で飛び起きる。ところが頭と打ちつけたような体の痛みに顔をしかめた。真っ白な掛布団が掛けられていて、ベッドに寝かされていたのだと気づく。

 ここはどこ?

「愛理」
 状況が把握できずにいたら名前を呼ばれ、すぐそばにはスーツを着た紘人の姿があった。私は彼に食って掛かるように尋ねる。

「真紘は!?」

 どうして彼が、とかそんな疑問さえ今はどうでもいい。真紘は大丈夫なのか。その一心しかない。

「落ち着いて。愛理のおかげで傷ひとつないよ。今は愛理のお母さんが見てくれている」

 紘人は私を安心させるようにゆっくりと説明した。その言葉で全身の力が抜けるのを感じる。そこでここは救急病院だと説明された。

 どうやら左折してきた車は、信号が変わり最初に横断歩道を渡ったグループを見送ったと、見切り発車で曲がろうとしたらしく、私と真紘の存在は完全に予想外だったらしい。

 慌ててブレーキを踏んだので軽い接触で済んだが、その拍子に私は道路に倒れて頭を打ったそうだ。真紘は私がとっさに車から遠ざかるよう除けたので、ベビーカーに乗っていたのもあり無傷で済んだそうで胸を撫で下ろす。

 母は今、真紘を抱っこしながら警察や車を運転していた人との対応をしているそうだ。紘人はひとまずナースコールで私が目覚めた旨を伝え、そこから部屋にやってきた医師から説明と確認をされる。
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