愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 結果、CTや頭部MRI検査もしたけれど脳に異常はないそうで、骨折などの様子もなく痛むのは打ち身だろうと言われた。とはいえ経過観察の意味もあり今日一日このまま入院するようにと伝えられる。

 紘人はしっかりと話を聞き、頭を下げて医師を見送った。少しだけ気持ちが落ち着き、冷静さを取り戻す。そうすると占めるのは自責の念だった。

「あの……ごめんなさい」

 打って変わって弱々しい口調で告げる。

「どうして愛理が謝るんだ?」

「真紘を……危険な目に合わせて」

 言いかけて一気に視界が滲む。もっと周りを確認しておけば。寝不足で判断力が落ちているのに外出して、自分の不注意だって原因だ。一歩間違っていたら取り返しのつかない事態になっていたかもしれないのに……。

 ポロポロと涙をこぼす私を紘人がそっと抱き寄せた。

「愛理はなにも悪くないよ。それどころか身を呈して真紘を守ろうとしてくれたんだろ」

 私は小さく首を横に振る。労るような手のひらの温もりにますます涙腺が緩んだ。思い返すと、紘人と直接会うのは、あの日以来だ。

「愛理と真紘が事故に遭って愛理が目を覚まさないって聞いたとき、心臓が止まるかと思った」

 頬を伝う涙が熱くて、切羽詰まった声色に胸が詰まる。

「無事でよかった」

「……ごめ、ん」

 おずおずと彼の背中に手を添える。本当に心配をかけた。忙しい紘人がずっとそばにいてくれたのだと思うと申し訳なさで苦しい。
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