愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 私はなにも言えなかった。紘人の件を問い詰めたとき、父はなにを考えていたんだろう。

 そして時が経ち、父が倒れたタイミングで、KMシステムズが働いた不正についての証拠や証言を用意して紘人が病室を訪れた。

 彼は父を責めたりせず、しかしこれらの事実を公表する旨を伝えたそうだ。そんな紘人に自分の跡を継いで会社を託そうと決めたと父から説明される。

 それは初耳だった。

「体調的なものもあるが、会社の評判を落としたとしても責任を取るつもりではいた。ただ私が辞めたとしてその後をどうするのか。彼の話や経歴を聞いて三木を紹介したんだ」

 てっきり紘人が復讐のためにKMシステムズを手に入れたのかと思っていたが、父からの希望が大きかったなんて。

「まさか彼が真紘の父親とはな。ただ、正直ホッとしている」

 崎本さんとの結婚を父は不機嫌そうに受け止めていた。崎本さんではなく、未婚で子どもがいる私をいいように思っていないと感じていた。父にとって私は恥ずべき娘なんだって。

 でも、そうじゃなかった。

 父を軽蔑して嫌いになったときもあった。縁を切りたいとさえ。……その裏で父なりの葛藤があったんだ。

 泣きだしそうになるのを耐えていたら、部屋にノック音が響く。顔を出したのは紘人で彼の姿に自然と笑顔になった。
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