悲しみも知らずに
医師か来て
「もう、大丈夫です。
くれぐれも気をつけて下さい。」
と、彼女に伝えると
「先生。ありがとうございます。」
と、頭を下げていた。
医師を玄関まで見送り
お礼を伝えて部屋に戻ると
「東上様、お忙しい中
ご迷惑おかけしまして
申し訳ありません。」
と、頭を下げる彼女に。
「11月にもなり肌寒い中
あんな所で寝泊まりするから
風邪等ひくのだ。」
と、言うと
一瞬、何を言われてる?
と、言うような顔をしていた
彼女が······
驚きと落胆の顔を見せ···
俯く······から·······
「すまなかった。」
と、詫びの言葉を伝えると
今度は、涙目で
俺を見て
また、不思議そうにしている。
「君の辛さも知らずに
自分の事ばかりで。
居心地の悪い場所に身を置かせ
本当に申し訳ない。」
と、言う俺に
彼女は、涙をパラパラ溢しながら
首を横に振った。
「小翔音。
君は、まだ若い。
俺ではない人と
幸せになった方が良い。
俺は、飛鳥を亡くしてから
自分がどうやって人と
接したり会話をしていたのか
解らなくなってしまい
必要な会話しかしなくなった。
飛鳥だけを思い
人に接しないなら
誰も娶らなければ良かったんだ。
そしたら、君も傷つかずに
病気にもならなかった。
本当にすまない。」
と、窓から外を見ながら
気持ちを伝えると
「もっ、······もしかしたら
もしか····したら·····
と、自分なりに頑張りました。
だけど、私みたいな者では
花菱様の足元にも
及ばないのだと
良くわかりました。
この邸は、私を···
私の全てを必要としていません。
東上様ご自身も。
どうか、花菱様を愛した
この邸で東上様は暮して下さい。」
と、言う彼女に
「必要と······されて·····ない···ヵ···」
と、小さく言うが
彼女に耳には届いてない。
「今後については考える。
小翔音は自分の身体を
きちんと治しなさい。
完治したら話そう。」
と、言うと
彼女は、頭を下げて
ベッドに横になる。
涙を拭く彼女に
ガーゼを渡し布団をかける
と、驚きの顔をしたが
ペコリと頭を下げた。
一度、部屋を出て
書斎でお茶を飲み湯を使い
主寝室を覗くと
彼女は、寝ていた。
まだ、病みやがり身だ。
疲れただろう。