悲しみも知らずに

小翔音が完全に完治したのは
医師から言われて二週間後だった。

今までの疲労や
精神的な物もあり
時間がかかったのだろう
と、推測された。

小翔音が倒れてから
ひと月以上が経過していた。

小翔音は、体調を崩している間
なんどもざわめきと煩さに
目を覚ました。
だが、それが何であるのか
考える力も気力も無く
目を閉じる

そんな日々が
本物なのか嘘なのかさえも
わからない。

体調が、落ち着いてきて
メイドにお茶を用意して貰い
ベッドの上で頂く

この部屋から出る事が
出来ないのだ。

出れば、見たくない物が見え
心が塞がれる。

それを乗り切る
心の準備が
気持ちが···出来ていない

いつまで、こんな思いを
と、思うが······

その夜
衛様が邸に見えた。

あの話しだと
思いながらも待つ

少しすると
部屋がノックされ
衛様が入ってきた。

湯を使い
ゆっくりされた身なりだ。

「体調は、どうだ?」
「はい。ありがとうございます。
もう、大丈夫かと思います。」
「そうか。
なら、少し部屋の外で
話そう。」
と、言われて
一瞬下を向くと
ベッドに座る私の肩に温かな
ガウンを掛けてくれて
手を差し出す衛様

どうして?
ここから出たくないの
と、心の中で思っていても

衛様から手を取られて
ベッド下に足を下ろされる。

鼻の奥が熱くなり
瞳がゆらゆらと揺れる

扉の前で
再度立ち止まる私に
衛様は、時間を置く
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