悲しみも知らずに

その日から
衛様は、毎日邸に戻り
一緒に食事をして
書斎へと行かれる。

多忙な方なのに
大丈夫なのか
と、心配になる。

ベッドへ入り目を閉じると
衛様がオデコに口付けを
してから出て行く。

私が寝ていると
思っているのだ。

起きている時は
無闇に私には触れない
エスコートの時も
さり気なく触れるだけ。

そんな中で、一年が来た。

主室のソファーに座り
衛様が私の寝室に行くのを待つ

衛様は、部屋を出て
私がソファーにいるのを
見て驚かれた。
それから悟り暗い顔をされた。

私は、衛様の手を取り
ソファーへと導き
「もう一度だけ
妻として側に置いて頂けませんか?
衛様が、どうしても
私を抱けないと言われるのでしたら
明日、東上から出てゆきます。」
と、衛様の目を見て
伝えると。

一瞬、びっくりされていたが
少し口元を、上げられて
「ありがとう。」
と、言っくれた。

その日
あの時とは嘘の様に
大切に大切に優しくだかれた
衛様は、何度も怖くないか
辛くないか
と、声をかけてくれるが
返事をする余裕もなく
頷いていた。

目を覚ますと
目元の涙を衛様から
拭かれていた。
「辛くないか?」
と、心配そうに言う衛様に
首を何度も振る。
「小翔音。
遅いかもしれないが
私は、貴方を愛している。」
と、言われ
「わたくしもっ·······
と、口に出す前に
口付けをされていた。 


幸せなひと時


こんな日を誰が
知っていたのだろうか?
本当に幸せ過ぎて
言葉がなかった。
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