悲しみも知らずに
あの離縁で泣き叫んだ後からの
話をメイドにきかされた。
皆までに訊かれていた事に
申し訳なさと
恥ずかしさでいっぱいだったが
あれが、なければ······
と、何度も言ってくれた。
あの小さな小屋も
衛様が見つけてきた、と。
辛く悲しみが目にありました。
だが、次の日から
工事が入り
あれよあれよと言う間に
邸は崩され
新たな邸が生まれました。
今では、古い邸は
どこにも存在しない。
初めから、このように
建てられていた
と、思える程に
ずっしりとそびえる
東上邸
実は、あの倉庫は
昔、飛鳥様とサボる時に
逃げていた場所だったのだと
衛様にきかされた。
だが、大人になられた
衛様は、そのことを
忘れていたらしい。
花菱の飛鳥様が
私を導いてくれたのだろうと
私は、衛様にも伝えた。
今では、私から離れる事もなく
私に充分な惜しみない
愛情をくださる
衛様のそばで生きて行く。
いつまでも、いつまでも。