麻衣ロード、そのイカレた軌跡❶/咆哮
その3
麻衣



「亜咲さん…、実は私も小さい頃に両親が離婚して、お父さんいないんですよ。小学校上がる前から、私はお母さんと二人で生きてきたんです」

「まあ…」

その時の亜咲さん、まあ驚いていたようなんだけど、そのリアクションはなんか、ナチュラル…

そんな感じだったかな…

「ふう…。それで、麻衣ちゃん、私ら同じような境遇ではあったけど、私が春に自分のこと告白した時、私は兄弟同然の子が近所にいてって言ったわ。あなたはどうだったのかな、そういった辺りは…。言いたくなかったらいいけど」

「…兄弟のいない寂しさは、やはり埋めることが出来ませんでしたよ。そりゃあ、父がいれば違ってたでしょうけど」

「そう…」

亜咲さんはそう言って、またため息をついてた

この人…、やっぱり他の人とは違う!

...


私はこの時も、今までの抱いていた亜咲さんへの念がより深いレベルにステップアップしたと実感したんだ

人が自身の立場、境遇でのシンパシーを感じるには、自分からした優越感、若しくは相手から受ける、”それ、私の方が…”とかって比較視された時点でその前提を失うよ

今の亜咲さんに言った身の上と同じこと、ある友達に告げた時だった

そいつ、私にこう言ってたよ

訴えるように…

「あなたはまだいいわよ、私なんかお母さんが病弱で…」

こういった言葉を、この亜咲さんからは聞きたくなかったんだよ

だから、絶対ないとは思っていても、半年前の時は口に出し切れなったんだろう

...


でも今日、この人のタメ息を目にしてそれが杞憂だったと確信できた

嬉しいよ!

亜咲さんは同じ母子家庭で育った私との境遇を、低い次元の視点ででは据えなかったんだもん

自分が看病に追われる立場を不幸がる気持ちより、淋しい気持ちの救いの場がなかった私をまずは慮ってくれた…

凄い人だ、さすがだよ、このお姉ちゃんは…


...


そしてあの時、何気に私の心のなかでひとつのことが思いうかんだ

いつか、このお姉ちゃんと一緒にバイク乗りまわしたい…

いや、亜咲さんがもう一度、”みんな”の中でバイクに乗ってる姿をみたい

それを実現させたい…

そして、今…

私のチームが生まれたという現実の元、その思いが再び燃え上がったんだ

いっそ、南玉連合の公認チームにしちゃえばいい

そうすれば、亜咲さんの南玉復帰が一時的でも叶うし…

私は即断した

私の行動は行動として、まずはレッドドッグスに亜咲さんを迎え入れよう!




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