麻衣ロード、そのイカレた軌跡❶/咆哮
その7
麻衣



その日、亜咲さんは病院でいろいろあって、昼抜きだったらしかった

で、軽くチョコパでもということになって、そのあとは門前仲通りの喫茶店に行った

亜咲さん、美味しそうに食べたな…

今後のことについての話は、あっさりとしたものだった

亜咲さんは、最後まで、私の”バック”には触れなかった

「今後のことはお前に任せる。この前の取決め通り、特攻隊の下になるけど頑張ってくれ。チームのメンバーへの対応も、お前に一任するよ」

亜咲さん、チョコパを軽く平らげちゃってね

「いやあ、美味しかったよ。空腹だったしさ、ハハ…。まさか、麻衣とチョコパになるとはね、想像もしなかったけど…(笑)」

この時の亜咲さんは、何ともいえないいい笑顔を浮かべてくれてた


...


「まあ、荒子がああだし、これからお前ともいろいろあるだろうけどさ…。どの道、今の局面じゃ”再編”避けられそうにないし…。それは、ウチらの下の代で決めてくことにならざるを得ない。ここにきて、私も細かいことは言わないよ。一つだけだ、約束して欲しいことは…」

私は黙って聞いていた

「私の走りの”純粋”な気持ち、”汚す”ようなことは絶対しないで。”解釈”はアンタに任せる。いいか?」

この時は、やや厳しい顔つきになってた

「はい、分かりました…」

そう答えた私の顔つきも、たぶん、ガラになく真剣な表情してたと思う

この人は私のこと、ホントに温かく接してくれてた

私もこの人には、接し方、他と全然違ったし…


...


亜咲さん、来週にも神戸で引越し先を決めてくると言っててね

決まり次第、即、病院を移って今の家、売却を進める考えだとも

バイト先には、近日中に辞めることを話すって

そこで私は尋ねた

端的にね

「南玉の方にはもう言ったんですか?このこと」

「さっき、達美には電話で伝えといた。夏美には達美から言ってもらう事になる。アンタへも近く連絡が行くはずだから」

「相川補佐には、直に話さないんですか、脱退の件は」

私がそう聞くと、亜咲さんは「ああ」とだけしか言わなかった

刀根さんは総長で、相川さんは補佐だから、刀根さんだけに直接言った

私はそうとは思わなかった、違うよ…

短い間だったが、私と一緒にチームやって、亜咲さんにも微妙な心の変化とか、あったんじゃないかな

それは、刀根さんと相川さんに対する接し方とかに、現れてるような気がしてならなかったよ






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