麻衣ロード、そのイカレた軌跡❶/咆哮
その8
麻衣


私は最後に思いきって、こう切り出した

「私、亜咲さんにお願いがあるんですけど…」

「何よ、改まってさ…」

亜咲さんは笑いながら言った

「あの、神戸行く前に一度、亜咲さんの”後ろ”に乗っけてくれませんか?」

亜咲さんは、一瞬、きょとんとしてたわ

「はは、そんなこと、いいに決まったるじゃん。でも、なんで…?まあ、考えてみりゃ、二人で乗っかったことなかったけどさ…」

「私、ずっと以前から、亜咲さんの運転するバイクに乗っかりたかったんです。さっきの隣に住んでる子、年中乗せてもらってるって聞いて、私もせめて一回くらいは、最後だしって気持ち、急に強くなっちゃって…」

亜咲さんは目を細めて私の話、聞いてくれてた

「よし、じゃあ、今から行くか?せっかくだから、高速飛ばそう」

私は頷いた

心の中は、ここ最近にないほど、ときめいていたかな


...


その後、店を出て、亜咲さんの後ろにまたがった

そして、両手で亜咲さんの細い胴を”抱いた”

私のバイクは店の前に置いて、念願のひと時を体感してくる…、そう考えると言いようのない心の高鳴りを感じたよ

轟音とともに疾走したマシンは、まるで宙を駆けている感覚だった

高速に入って、スピードが上がってった

「麻衣、しっかり握ってろ!」

亜咲さんはそう言うと、私の手をポンポンと軽く叩いてくれた

「うん、お姉ちゃん…」

私は小声だったが、確かにそう言った

亜咲さんの背中に、右のほっぺたギュッと寄せて…

私は夢心地だった





< 36 / 53 >

この作品をシェア

pagetop