彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
婚礼の儀
美咲side
目覚めるとすぐに、部屋の中を見渡した……。
彫りの入った朱色の伝統家具……、フワッとしたシルクのようなピンク色の布団と衣服……。
「戻ってない……」
昨日と同じ、訳の分からない世界に私は居た。
それにしても、この状況でよく眠れたものだと我ながら感心してしまう。とても清々しい朝だ。
「ヨナお嬢様! お目覚めでしょうか? 支度の者どもが到着致しました」
ずっと、付きっきりで世話をしてくれているチヌの声だ。チヌは、私が幼少の頃から側に居る母親のような存在らしい。
ゆっくりと戸を開け、寝起きの顔を覗かせ聞いてみた。
「支度って、着替えのこと?」
「何をおっしゃってるんですか! 婚礼の支度ですよ」
呆れたように私を直視しながら、チヌがせかせかと部屋に入ってくる。
「結婚って……、誰がするの?」
「またご冗談を。ヨナお嬢様ですよ! たいへん良い日和でございます」
チヌに続いて、次々に人が入ってくる。
「えっ! 私の結婚式ーっ」
おそらくは、鳩が豆鉄砲をくらった顔であろうまま、おしろいがパタパタと飛んでくる。
(ちょっと、どーなってんの! もう、元の世界には戻れないの?)
確か、あのイケメン天使は、ヨナを演じていれば全て上手くいくって言ってたけど……、上手くいくって元の世界に戻れるってことじゃないの?
そうだ! ヨナではないことがバレたらヤバいんだった。
そうこう考えている間にも、支度が進められていく……。
美容や着付けのプロなのだろうか?
色とりどりの民族衣装を着た人達が1ダースほど、それぞれに手際良く動いている。
(結婚って、もしかしてあの護衛と? チヌには聞けないから、この人達に聞いてみようか?)
「あの〜、私が誰と結婚するのか知ってます?」
髪を結っていた同世代の女が、微笑みながら応えた。
「国じゅうの者が知ってますよ。国王ですもの。お嬢様は、王様の第3夫人になられるのですよね」
(えっ、護衛じゃなくて、国王の3番目? それにしても、本妻じゃなくて、愛人?)
なんか、納得できない……。
金銀の刺繍が施された真っ赤な絹の衣装に、スッと袖を通す。
(うわっ、綺麗〜っ!)
煌びやかな宝石が散りばめられた髪飾りやアクセサリーが付けられる。
(うっそーっ、素敵過ぎる!)
「お美しい〜」
思わず漏れるうっとりとしたまわりの声が、心地よく耳に届く。
「お嬢様、お支度が整いました」
そう言って、美容や着付けをしていた人達が全員並んで会釈をした。
「えっ……」
鏡に映る豪華絢爛な自分の姿に、暫し酔いしれる……。
(ちょっと……、最高じゃない!)
彫りの入った朱色の伝統家具……、フワッとしたシルクのようなピンク色の布団と衣服……。
「戻ってない……」
昨日と同じ、訳の分からない世界に私は居た。
それにしても、この状況でよく眠れたものだと我ながら感心してしまう。とても清々しい朝だ。
「ヨナお嬢様! お目覚めでしょうか? 支度の者どもが到着致しました」
ずっと、付きっきりで世話をしてくれているチヌの声だ。チヌは、私が幼少の頃から側に居る母親のような存在らしい。
ゆっくりと戸を開け、寝起きの顔を覗かせ聞いてみた。
「支度って、着替えのこと?」
「何をおっしゃってるんですか! 婚礼の支度ですよ」
呆れたように私を直視しながら、チヌがせかせかと部屋に入ってくる。
「結婚って……、誰がするの?」
「またご冗談を。ヨナお嬢様ですよ! たいへん良い日和でございます」
チヌに続いて、次々に人が入ってくる。
「えっ! 私の結婚式ーっ」
おそらくは、鳩が豆鉄砲をくらった顔であろうまま、おしろいがパタパタと飛んでくる。
(ちょっと、どーなってんの! もう、元の世界には戻れないの?)
確か、あのイケメン天使は、ヨナを演じていれば全て上手くいくって言ってたけど……、上手くいくって元の世界に戻れるってことじゃないの?
そうだ! ヨナではないことがバレたらヤバいんだった。
そうこう考えている間にも、支度が進められていく……。
美容や着付けのプロなのだろうか?
色とりどりの民族衣装を着た人達が1ダースほど、それぞれに手際良く動いている。
(結婚って、もしかしてあの護衛と? チヌには聞けないから、この人達に聞いてみようか?)
「あの〜、私が誰と結婚するのか知ってます?」
髪を結っていた同世代の女が、微笑みながら応えた。
「国じゅうの者が知ってますよ。国王ですもの。お嬢様は、王様の第3夫人になられるのですよね」
(えっ、護衛じゃなくて、国王の3番目? それにしても、本妻じゃなくて、愛人?)
なんか、納得できない……。
金銀の刺繍が施された真っ赤な絹の衣装に、スッと袖を通す。
(うわっ、綺麗〜っ!)
煌びやかな宝石が散りばめられた髪飾りやアクセサリーが付けられる。
(うっそーっ、素敵過ぎる!)
「お美しい〜」
思わず漏れるうっとりとしたまわりの声が、心地よく耳に届く。
「お嬢様、お支度が整いました」
そう言って、美容や着付けをしていた人達が全員並んで会釈をした。
「えっ……」
鏡に映る豪華絢爛な自分の姿に、暫し酔いしれる……。
(ちょっと……、最高じゃない!)