彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
「まぁ、ここでの暮らしも悪くはないなぁとは思ってるんだけど……。でも、やっぱり元の世界に帰らなきゃいけない気もするし……」
凄い人だと思った。どこでも、どんな状況にも順応していける人なのだと。
でも、きっと、元の世界に帰らなきゃいけない人なんだ。美咲さんを失いたくない人が、たくさん待っているはず……。だけど、どうして、美咲さんまでこんなことになってしまったのだろう……。
(もしかして……、あの人なら何か知っているかもしれない!)
「あの……、美咲さんのお兄さんに聞いてみたら分かるんじゃないですか?」
「お兄さん?」
美咲さんが、前のめりになって迫ってくる。
「私、この世界に来た時、川原で美咲さんのお兄さんに抱きかかえられてたんです」
「抱きかかえられてた?」
瞬間的に、美咲さんの中で何かが繋がったようだ。更に、前のめりになって迫ってくる。
「そうそう! 私の兄と名乗るあの男が駅のホームで世奈を抱き上げて、そなたも一緒にとかなんとか言って……。そうだよ! あいつが私達をここに連れてきたんだよ!」
(えっ!
ということは、私はあの人に助けられたの?)
「ヨナお嬢様! 間もなく祝宴が始まります。王様がお待ちですよ」
美咲さんと母娘のように仲の良い、先程の使用人の声が聞こえてくる。
「ゲッ、待たなくていいから! もう勘弁してよ……。この環境は受け入れられるけど、あの国王だけは絶対に無理!」
(そっか、これは政略結婚だったんだ。やっぱり美咲さんは、国王のこと好きじゃないんだ)
「そうですよね。国王かもしれないけど、美咲さんには合わない気がします。結構、年も離れてるんじゃないですか?」
うっかり、国王の悪口を言ってしまった。反射的に、まわりを警戒する。
「ほんと、いい歳して図々しいよ! どうせなら第十夫人とかで、存在忘れて欲しいんだけど」
面白い発想をする人だと思った。私だったらとても耐えられない状況を、笑いに変えている。
笑ってはいけないことなんだろうけど、思わず吹きだしてしまった。
「世奈! あんたさぁ、可愛い顔してんだから明るくしてた方がいいよ。ちょっと暗過ぎだったから」
「えっ……」
嬉しかった。
けれども、私は人に顔を見られることに慣れていない。
「ヨナお嬢様! 早く、お支度を!」
使用人の声が、切羽詰まったものに変わった。
「はいはーい」
美咲さんがお茶目に笑いながら、軽い返事をした。
私も立ち上がり、あっさり部屋を出ていこうとしたら、美咲さんに引き止められた。
「ねぇ、またここに来てね! この世界では、世奈だけが頼りだから」
必要としてくれている。迷惑を掛けているのに、どうしようもない私なのに、こんなに綺麗な人が私を信頼してくれている。
「何か分かったら知らせに来ます」
嬉しくて、すごーく嬉しくて、思わずそう言っていた。
凄い人だと思った。どこでも、どんな状況にも順応していける人なのだと。
でも、きっと、元の世界に帰らなきゃいけない人なんだ。美咲さんを失いたくない人が、たくさん待っているはず……。だけど、どうして、美咲さんまでこんなことになってしまったのだろう……。
(もしかして……、あの人なら何か知っているかもしれない!)
「あの……、美咲さんのお兄さんに聞いてみたら分かるんじゃないですか?」
「お兄さん?」
美咲さんが、前のめりになって迫ってくる。
「私、この世界に来た時、川原で美咲さんのお兄さんに抱きかかえられてたんです」
「抱きかかえられてた?」
瞬間的に、美咲さんの中で何かが繋がったようだ。更に、前のめりになって迫ってくる。
「そうそう! 私の兄と名乗るあの男が駅のホームで世奈を抱き上げて、そなたも一緒にとかなんとか言って……。そうだよ! あいつが私達をここに連れてきたんだよ!」
(えっ!
ということは、私はあの人に助けられたの?)
「ヨナお嬢様! 間もなく祝宴が始まります。王様がお待ちですよ」
美咲さんと母娘のように仲の良い、先程の使用人の声が聞こえてくる。
「ゲッ、待たなくていいから! もう勘弁してよ……。この環境は受け入れられるけど、あの国王だけは絶対に無理!」
(そっか、これは政略結婚だったんだ。やっぱり美咲さんは、国王のこと好きじゃないんだ)
「そうですよね。国王かもしれないけど、美咲さんには合わない気がします。結構、年も離れてるんじゃないですか?」
うっかり、国王の悪口を言ってしまった。反射的に、まわりを警戒する。
「ほんと、いい歳して図々しいよ! どうせなら第十夫人とかで、存在忘れて欲しいんだけど」
面白い発想をする人だと思った。私だったらとても耐えられない状況を、笑いに変えている。
笑ってはいけないことなんだろうけど、思わず吹きだしてしまった。
「世奈! あんたさぁ、可愛い顔してんだから明るくしてた方がいいよ。ちょっと暗過ぎだったから」
「えっ……」
嬉しかった。
けれども、私は人に顔を見られることに慣れていない。
「ヨナお嬢様! 早く、お支度を!」
使用人の声が、切羽詰まったものに変わった。
「はいはーい」
美咲さんがお茶目に笑いながら、軽い返事をした。
私も立ち上がり、あっさり部屋を出ていこうとしたら、美咲さんに引き止められた。
「ねぇ、またここに来てね! この世界では、世奈だけが頼りだから」
必要としてくれている。迷惑を掛けているのに、どうしようもない私なのに、こんなに綺麗な人が私を信頼してくれている。
「何か分かったら知らせに来ます」
嬉しくて、すごーく嬉しくて、思わずそう言っていた。