彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
 祝宴が終わると、国王のあとに続いて席を立った。王族や重臣に見守られる中、賑わう会場を退席する……。
 右隣りに座っていたド派手なおばさんも、私の隣りを歩いている。

 本殿を出ると、客人の中に、パパとママにそっくりな父上と母上の姿を見つけた。真っ暗な空には、満月が煌々と映し出されている。

 先頭を歩いていた国王が、父上の前で足を止めた。

「ホン殿、良きご息女である。礼を申すぞ」

 そう言って、満足そうに振り返り私を見た。
 
 やっぱり、キモい……。でも、いつも余裕のないクソ部長とは何かが違う。穏やかな笑顔と貫禄に、人として器の大きさを感じる。

 その瞬間、ド派手なおばさんがビクッと震えたような気がした。何か、気に入らないようだ……。

 国王の言葉に、父上は深々と頭を下げ恐縮している。母上も瞳を潤ませ、同じように頭を下げている。

 娘が国王の側室になるこの結婚を、よほど誇らしく思っているのか?
 とても和やかな良いムードではあるが、全然嬉しくはない。それどころか、ド派手なおばさんが鬼のような形相で睨みつけてくる。
 
(なんなんだ、このおばさんは!)

 ド派手なおばさんを睨み返し、心配そうに見つめる父上と母上の前を通り過ぎる……。
 少し進んでから、一度、振り返った。父上も母上も、とても苦しそうに微笑んでいる。
 
(えっ! この結婚、本当は嬉しくないの? 本意ではない結婚……。やはり王命に逆らえなかったのか?)

 元の世界に居る老いた両親の姿と重なり、二人の元に駆け寄りたくなった。けれども、いろんな意味で流れに逆らえない。

 南殿に向かう廊下の入り口では、チヌや使用人達が待機していた。
 
(この世界にも、私の居場所があるんだ……)

 なぜか、少しホッとする。

 国王はそのまままっすぐに進んでいき、ド派手なおばさんは私と真逆の左に曲がっていった。
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