彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
 これは……、

 これは、最後の映像かもしれない……。

 模擬試験が返却され、その結果に私は愕然としている。恐ろしいほど最悪な点数で、希望する大学もA判定からC判定に落ちていた。
 おそらく、高三になってみんなは本気モードに入ったのだろう。
 
 親にもまだ見せていない。もう、がっかりされたくないし、悲しむ顔は見たくない……。
 間もなく、面談が始まるからいずれは知られてしまうのに……。

 両親は名が知れている大学を卒業しているから、当然それを超えると思われている。

“こんなに頑張ってきたのに、どうして……”

 辛過ぎる私の人生……。

 どんなに頑張っても、どんなに傷付いても、報われない……。

 ただ、期待に応えたかった。

 苦しみの涙を流しながら、必死に努力してきた。
 でも……、

(もう、疲れた……。

 もう、頑張れない……。

 生きる力なんて、どこにも残っていない。

 私が悪いの?

 神様はどうしてそんなに意地悪なの?)

 疲れた……。
 争うことに、疲れた……。
 人の顔色を気にすることに疲れた……。

(こんな人生……、早く終わりにしたい!

 消えたい……。

 この世界から消えてしまいたい。

 苦しいことしかないこんな世界に、なんの未練もない。

 何も出来ない、情けない自分が大っ嫌いだ。

 私が居なくなっても、きっと何も変わらない……。

 今までと同じように、この世界は動いているのだろう。

 誰にも必要とされない、なんの価値もない人間だ!)

 ずっと、死にたかった。

 早く、楽になりたかった。

 楽しいことも、嬉しいことも、何一つない毎日。

 もう、うんざりだ。

(もう、誰とも会いたくない!
 話したくない!
 何も考えたくない!

 とにかく、消えたい。

 とにかく、死にたい!)

 それなのに……、

 どうして……、

 どうして消えないの?

 眩しい!

 この光は……、電車のライト?

 まっ、眩しい……。
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