彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
華の宴
美咲side
朝から、宮殿の中が騒がしい……。
さすがに自ら目覚め、身支度も一人で整え、様子を窺うように南殿の廊下を抜けていく。
渡り廊下に出ると、庭園には赤い毛氈が敷かれ、使用人達が宴の準備に走りまわっていた。どの花も色鮮やかに咲き乱れ、見頃を迎えている。
今日、催される華の宴には、巫女達も出席するらしい。
(ようやく、世奈に会える! この日を楽しみにしていた!!)
王宮での暮らしは、最高レベルだ。正直、現状には満足している。
けれども、どうしてこの世界に居るのか、どうして私が国王の第三夫人なのか、そのからくりが知りたい。
「ヨナお嬢様!」
チヌが、王宮の中央の方から嬉しそうに走り寄ってきた。眩いほどに鮮やかなレモン色の衣裳を抱えている。
「ご覧ください! ヨナお嬢様が見立てられたお衣裳が、こんなに見事に仕上がってまいりました」
自分のことのようにはしゃぎながら、その衣裳を丁寧に広げてみせる。
「うわっ、思ってた通り! 本当に綺麗な色〜」
王家専属の商人達がやってきて、私が生地を選び自らデザインも考えた。この宴の為、国王の計らいで用意された、いわゆるオーダーメイドというやつだ。
クソ部長とは違って、国王は女の気持ちが分かる男のようである。
「さぁ、お支度をしましょう」
すぐに部屋に戻り、レモン色の衣裳に着替えてみる。
「かなり、いいかも!」
鏡の中の自分が、満足そうな笑みを浮かべている。
「お飾りも届いております」
あとに控えている王宮の使用人から、チヌが立派な箱を受け取る。
蓋を開けると、
「うぉーっ!」
もう、目が輝いた。
エメラルドを中心とした髪飾りや装飾品が、これでもかというほどにキラキラと煌めいている。
衣裳と飾りを合わせて、もう一度鏡の前に立つ。
「ちょっとちょっと、最高じゃない! ねぇ、チヌ」
「きっと、ヨナお嬢様が一番お美しゅうございます」
私につられて、チヌも鏡の中でニンマリと笑う。
チヌは時々面白い表情をする。体裁上、固いことばかり言っているが、負けることが大嫌いな私寄りの人間のような気がする。
何より、全力で私の味方をしてくれる最強の相棒だ。
私はチヌに、家族よりも深い絆を感じ始めていた……。
さすがに自ら目覚め、身支度も一人で整え、様子を窺うように南殿の廊下を抜けていく。
渡り廊下に出ると、庭園には赤い毛氈が敷かれ、使用人達が宴の準備に走りまわっていた。どの花も色鮮やかに咲き乱れ、見頃を迎えている。
今日、催される華の宴には、巫女達も出席するらしい。
(ようやく、世奈に会える! この日を楽しみにしていた!!)
王宮での暮らしは、最高レベルだ。正直、現状には満足している。
けれども、どうしてこの世界に居るのか、どうして私が国王の第三夫人なのか、そのからくりが知りたい。
「ヨナお嬢様!」
チヌが、王宮の中央の方から嬉しそうに走り寄ってきた。眩いほどに鮮やかなレモン色の衣裳を抱えている。
「ご覧ください! ヨナお嬢様が見立てられたお衣裳が、こんなに見事に仕上がってまいりました」
自分のことのようにはしゃぎながら、その衣裳を丁寧に広げてみせる。
「うわっ、思ってた通り! 本当に綺麗な色〜」
王家専属の商人達がやってきて、私が生地を選び自らデザインも考えた。この宴の為、国王の計らいで用意された、いわゆるオーダーメイドというやつだ。
クソ部長とは違って、国王は女の気持ちが分かる男のようである。
「さぁ、お支度をしましょう」
すぐに部屋に戻り、レモン色の衣裳に着替えてみる。
「かなり、いいかも!」
鏡の中の自分が、満足そうな笑みを浮かべている。
「お飾りも届いております」
あとに控えている王宮の使用人から、チヌが立派な箱を受け取る。
蓋を開けると、
「うぉーっ!」
もう、目が輝いた。
エメラルドを中心とした髪飾りや装飾品が、これでもかというほどにキラキラと煌めいている。
衣裳と飾りを合わせて、もう一度鏡の前に立つ。
「ちょっとちょっと、最高じゃない! ねぇ、チヌ」
「きっと、ヨナお嬢様が一番お美しゅうございます」
私につられて、チヌも鏡の中でニンマリと笑う。
チヌは時々面白い表情をする。体裁上、固いことばかり言っているが、負けることが大嫌いな私寄りの人間のような気がする。
何より、全力で私の味方をしてくれる最強の相棒だ。
私はチヌに、家族よりも深い絆を感じ始めていた……。