彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
深まる絆
美咲side
南殿の部屋に戻ると、すぐに世奈が現れた。
入り口まで走り、急いで戸を開ける。
「世奈! 大丈夫だった?」
もう泣き顔ではない、いつも以上に明るい表情をした世奈が立っていた。ふわりと風が吹いて、水色の衣装と艶のある黒髪が優しく揺れている。
「美咲さん! さっきはありがとうございました」
よほど嬉しかったのか? キャラが変わったのか? ハキハキとお礼を言う世奈は、まるで別人のようだ。
「いいの、いいの。あのド派手ババァには私もムカついてたから!」
つい調子に乗って、言ってしまった。
世奈の隣りで、チヌが咳払いをしている。まわりを気にしろというチヌの合図だ。
とりあえず背筋を伸ばし、妃らしい振舞いを演出する。
「中へどうぞ」
世奈も状況を把握したらしく、静かな笑顔で会釈をしている。
チヌは満足そうに頷き、
「それでは、何かありましたらお声掛け下さい」
そう言いながら他の使用人達を連れて部屋を出ていった。
世奈を、部屋の奥へと誘導する。
「あの方と、仲がいいんですね」
小さな机の前に座りながら、世奈が廊下の方をチラチラと気にする。
「あっ、チヌのこと?」
世奈と向かい合って、私も腰を下ろした。
「はい、チヌさんというんですね」
「チヌは、ホン家からずっと一緒だったからね。なんでも教えてくれるし、なんでも話せるし、チヌが居なかったら私ヤバかったよ」
「じゃあ、全て知ってるんですか? 別の世界の人間だということも」
「それは言ってない。だって、イケメン天使、あっ、私の兄っていう男が、この世界の人間ではないことがバレたら処刑されるって言うから」
「えっ、そうなんですか!!」
(なんだか、世奈が焦っている。もしや、既に誰かに言ってしまったのでは?)
「実は、コウにだけは全て話そうとしました。ですが、未来から来た人間だと言っても……。結局、信じてもらえませんでした」
(信じてない……。これは、セーフなのか? 特に、問題も起きてなさそうだし……)
「コウって、さっき世奈を庇ってくれた巫女?」
「そうです。私もコウが居なかったら、きっと大変でした」
なるほど。世奈のキャラが変わったのは、コウって子の影響なのかもしれない……。
もしかして、世奈がこの世界の人間ではないということがバレたらヤバいと知ってて、コウって子はシラをきっているのではないだろうか?
入り口まで走り、急いで戸を開ける。
「世奈! 大丈夫だった?」
もう泣き顔ではない、いつも以上に明るい表情をした世奈が立っていた。ふわりと風が吹いて、水色の衣装と艶のある黒髪が優しく揺れている。
「美咲さん! さっきはありがとうございました」
よほど嬉しかったのか? キャラが変わったのか? ハキハキとお礼を言う世奈は、まるで別人のようだ。
「いいの、いいの。あのド派手ババァには私もムカついてたから!」
つい調子に乗って、言ってしまった。
世奈の隣りで、チヌが咳払いをしている。まわりを気にしろというチヌの合図だ。
とりあえず背筋を伸ばし、妃らしい振舞いを演出する。
「中へどうぞ」
世奈も状況を把握したらしく、静かな笑顔で会釈をしている。
チヌは満足そうに頷き、
「それでは、何かありましたらお声掛け下さい」
そう言いながら他の使用人達を連れて部屋を出ていった。
世奈を、部屋の奥へと誘導する。
「あの方と、仲がいいんですね」
小さな机の前に座りながら、世奈が廊下の方をチラチラと気にする。
「あっ、チヌのこと?」
世奈と向かい合って、私も腰を下ろした。
「はい、チヌさんというんですね」
「チヌは、ホン家からずっと一緒だったからね。なんでも教えてくれるし、なんでも話せるし、チヌが居なかったら私ヤバかったよ」
「じゃあ、全て知ってるんですか? 別の世界の人間だということも」
「それは言ってない。だって、イケメン天使、あっ、私の兄っていう男が、この世界の人間ではないことがバレたら処刑されるって言うから」
「えっ、そうなんですか!!」
(なんだか、世奈が焦っている。もしや、既に誰かに言ってしまったのでは?)
「実は、コウにだけは全て話そうとしました。ですが、未来から来た人間だと言っても……。結局、信じてもらえませんでした」
(信じてない……。これは、セーフなのか? 特に、問題も起きてなさそうだし……)
「コウって、さっき世奈を庇ってくれた巫女?」
「そうです。私もコウが居なかったら、きっと大変でした」
なるほど。世奈のキャラが変わったのは、コウって子の影響なのかもしれない……。
もしかして、世奈がこの世界の人間ではないということがバレたらヤバいと知ってて、コウって子はシラをきっているのではないだろうか?