彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
世奈side
華の宴が終わると、再び、第三夫人の住居・南殿に行くようにとマヤ様から指示があった。
いつも美咲さんの傍に付いている年配の使用人が、渡り廊下から私に手招きしている。
親しみやすい、優しい笑顔だ。
思わず、子供のように走り寄っていた。
(あっ、このかんざしは外した方がいいのかもしれない……)
廊下を歩きながら、かんざしに手を掛けると、
「そのかんざし、よくお似合いですよ」
心の揺れを察したかのように、年配の使用人が私の顔を見て微笑んだ。
「付けていても良いのでしょうか?」
「勿論です。スヨン様以外に、そのかんざしが似合う者はおりません」
その言葉で、心の曇り空が一気に晴れ渡った……。
誰かに認めてもらえるというのは、こんなにも自信を持てることなのだろうか?
もう迷うことなく、キラキラと輝くそのかんざしを付けたまま堂々と歩いていた。
部屋の前まで来ると、前回と同じく美咲さんが飛び出てきた!
本当に、綺麗な人だ……。レモン色の衣装を着た美咲さんは、間近で見ると溶けてしまいそうなくらいに眩しい。
「世奈! 大丈夫だった?」
こんなに美しい人が、私の為にあの第二夫人と戦ってくれたんだ。
「美咲さん! さっきはありがとうございました」
心から、お礼を言った。
「いいの、いいの。あのド派手ババァには私もムカついてたから!」
もう、直球過ぎて笑ってしまう。また年配の使用人に叱られているようだ。
美咲さんが、まわりを気にしながら上品に振る舞いだした。
「中へどうぞ」
完璧な妃だ。
私も合わせるように会釈をし、再び煌びやかな部屋の中へと入っていった。
「それでは、何かありましたらお声掛け下さい」
年配の使用人が、他の使用人達を引き連れて部屋を出ていく。
何か、名残り惜しいような気がした。その使用人にも傍に居て欲しいような……。
閉められた戸を振り返りながら、
「あの方と、仲が良いんですね」そう言っていた。
「あっ、チヌのこと?」
「はい、チヌさんというんですね」
目の前に座った美咲さんが、満足そうに話し始める。
「チヌは、ホン家からずっと一緒だったからね。なんでも教えてくれるし、なんでも話せるし、チヌが居なかったら私ヤバかったよ」
なんでも話せる関係、ちょっと羨ましいような気がした。
ということは?
「じゃあ、全て知ってるんですか? 別の世界の人間だということも」
「それは言ってない。だって、イケメン天使、あっ、私の兄っていう男が、この世界の人間ではないことがバレたら処刑されるって言うから」
「えっ、そうなんですか!」
(嘘っ、知らなかった! そんなに大変なことだったの? コウに話したけど……。でも、その話はスルーされて……)
美咲さんが、心配そうな顔で覗き込んでいる。
「実は、コウにだけは全て話そうと思いました。ですが、未来から来た人間だと言っても、結局信じてもらえませんでした」
これが事実だと知っても、コウなら大丈夫だと思っている。チヌさんだって……。でも、処刑されるって……。
(この世界の者ではないということは、そんなに罪なことなの?)
「コウって、さっき世奈を庇ってくれた巫女?」
「そうです。私もコウが居なかったら、きっと大変でした」
本当に、コウの存在に救われている……。
コウと出逢って、友達と一緒に居ることが楽しいと思えるようになった。
美咲さんとコウ……。
同じことを悩み、一緒に考えられる人が居るということは、とても素敵なことだ。
いつも美咲さんの傍に付いている年配の使用人が、渡り廊下から私に手招きしている。
親しみやすい、優しい笑顔だ。
思わず、子供のように走り寄っていた。
(あっ、このかんざしは外した方がいいのかもしれない……)
廊下を歩きながら、かんざしに手を掛けると、
「そのかんざし、よくお似合いですよ」
心の揺れを察したかのように、年配の使用人が私の顔を見て微笑んだ。
「付けていても良いのでしょうか?」
「勿論です。スヨン様以外に、そのかんざしが似合う者はおりません」
その言葉で、心の曇り空が一気に晴れ渡った……。
誰かに認めてもらえるというのは、こんなにも自信を持てることなのだろうか?
もう迷うことなく、キラキラと輝くそのかんざしを付けたまま堂々と歩いていた。
部屋の前まで来ると、前回と同じく美咲さんが飛び出てきた!
本当に、綺麗な人だ……。レモン色の衣装を着た美咲さんは、間近で見ると溶けてしまいそうなくらいに眩しい。
「世奈! 大丈夫だった?」
こんなに美しい人が、私の為にあの第二夫人と戦ってくれたんだ。
「美咲さん! さっきはありがとうございました」
心から、お礼を言った。
「いいの、いいの。あのド派手ババァには私もムカついてたから!」
もう、直球過ぎて笑ってしまう。また年配の使用人に叱られているようだ。
美咲さんが、まわりを気にしながら上品に振る舞いだした。
「中へどうぞ」
完璧な妃だ。
私も合わせるように会釈をし、再び煌びやかな部屋の中へと入っていった。
「それでは、何かありましたらお声掛け下さい」
年配の使用人が、他の使用人達を引き連れて部屋を出ていく。
何か、名残り惜しいような気がした。その使用人にも傍に居て欲しいような……。
閉められた戸を振り返りながら、
「あの方と、仲が良いんですね」そう言っていた。
「あっ、チヌのこと?」
「はい、チヌさんというんですね」
目の前に座った美咲さんが、満足そうに話し始める。
「チヌは、ホン家からずっと一緒だったからね。なんでも教えてくれるし、なんでも話せるし、チヌが居なかったら私ヤバかったよ」
なんでも話せる関係、ちょっと羨ましいような気がした。
ということは?
「じゃあ、全て知ってるんですか? 別の世界の人間だということも」
「それは言ってない。だって、イケメン天使、あっ、私の兄っていう男が、この世界の人間ではないことがバレたら処刑されるって言うから」
「えっ、そうなんですか!」
(嘘っ、知らなかった! そんなに大変なことだったの? コウに話したけど……。でも、その話はスルーされて……)
美咲さんが、心配そうな顔で覗き込んでいる。
「実は、コウにだけは全て話そうと思いました。ですが、未来から来た人間だと言っても、結局信じてもらえませんでした」
これが事実だと知っても、コウなら大丈夫だと思っている。チヌさんだって……。でも、処刑されるって……。
(この世界の者ではないということは、そんなに罪なことなの?)
「コウって、さっき世奈を庇ってくれた巫女?」
「そうです。私もコウが居なかったら、きっと大変でした」
本当に、コウの存在に救われている……。
コウと出逢って、友達と一緒に居ることが楽しいと思えるようになった。
美咲さんとコウ……。
同じことを悩み、一緒に考えられる人が居るということは、とても素敵なことだ。