彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
造られた罪
世奈side
宮殿の近くにある小さな市場に、コウと二人で買出しに来ていた。
店頭に並ぶ品々を横目に見ながら、昨日、川原で起きた出来事について事細かに報告していた。
「じゃあ、スヨンには霊力が付いた
というの?」
「霊力?」
「凄いことよ! どうしたら、霊が見えるようになるの?」
ずっと、コウからの質問責めだ。
ここに居る私が既に何者だかよく分からないのだから、もう次元を超えた話なのだろう。
「だけど、自分から進んで地獄に行くなんて、苦しみとは恐ろしいものね」
コウが、身震いしながら私を見る。
「たぶん、それしか選択できなかったんだと思う」
「私、地獄なんて絶対に行きたくないわ!」
コウは、天国に行くに決まってる。あんなに恐ろしい第二夫人から、私を庇ってくれるような勇気のある人だ。
私は、あの少女達が地獄を選んだ気持ちがなんとなく分かる。
「見て、スヨン! これ美味しそ〜」
ほうれん草なのか、小松菜なのか、鮮度抜群の青い野菜を抱えて、コウが激しく興奮している。
「きっと、みんな喜ぶわよ」
野菜一つで、人はこんなにも幸せになれるものなのか?
ある意味、ジェネレーションギャップのようなものを感じる。
(えっ……?)
ずっと満面の笑みを浮かべていたコウの表情が、いきなり変わった。
「コウ……。どうしたの?」
「ねっ、あれ……」
コウの視線を辿る……。
副代表だ! 装束ではなくグレーの衣装を着た副代表が、人気のない裏通りの片隅で誰かと話をしている。
(相手は誰だろう?)
コウの立っている場所に近付いて、覗き込んでみる。
(嘘……)
第二夫人だ!
副代表と第二夫人が、まわりを気にしながらひそひそと話し込んでいる。
(あの二人は、繋がってたの……?)
「行きましょ!」
私の腕を取って、コウが慌ててその場を立ち去ろうとする……。
そのまま、市場の出入り口を通り過ぎようとすると、木製の掲示板の前に人だかりができていた。
一瞬、目を合わせてから、二人でその輪を割って入っていく……。
そこには貼り紙があった。ところどころの文字は分かるけれど、意味がよく分からない。
同じように貼り紙を見つめるコウの顔は、凍り付いていた。
「どうしたの! なんて書いてあるの?」
私の問いに、コウが小さな声で応える。
「ホン一族に、謀反を企てた罪が問われてるわ。地主と手を組んで、乱を起こそうとした大逆罪って……。これは、お触れ書きよ」
「お触れ書き?」
「朝廷からの知らせ。だけど、ホン家が謀反だなんて、きっと何かの間違いよ!」
ホン家といったら、ジュンユン様や美咲さんの実家だ!
(謀反って、どういうこと? 一族全員が罪人なの?)
ふと、副代表と第二夫人が話し込んでいたことを思い出した。
(これって……、まさか!)
波打つ鼓動を抑えながら、私は走りだしていた。
店頭に並ぶ品々を横目に見ながら、昨日、川原で起きた出来事について事細かに報告していた。
「じゃあ、スヨンには霊力が付いた
というの?」
「霊力?」
「凄いことよ! どうしたら、霊が見えるようになるの?」
ずっと、コウからの質問責めだ。
ここに居る私が既に何者だかよく分からないのだから、もう次元を超えた話なのだろう。
「だけど、自分から進んで地獄に行くなんて、苦しみとは恐ろしいものね」
コウが、身震いしながら私を見る。
「たぶん、それしか選択できなかったんだと思う」
「私、地獄なんて絶対に行きたくないわ!」
コウは、天国に行くに決まってる。あんなに恐ろしい第二夫人から、私を庇ってくれるような勇気のある人だ。
私は、あの少女達が地獄を選んだ気持ちがなんとなく分かる。
「見て、スヨン! これ美味しそ〜」
ほうれん草なのか、小松菜なのか、鮮度抜群の青い野菜を抱えて、コウが激しく興奮している。
「きっと、みんな喜ぶわよ」
野菜一つで、人はこんなにも幸せになれるものなのか?
ある意味、ジェネレーションギャップのようなものを感じる。
(えっ……?)
ずっと満面の笑みを浮かべていたコウの表情が、いきなり変わった。
「コウ……。どうしたの?」
「ねっ、あれ……」
コウの視線を辿る……。
副代表だ! 装束ではなくグレーの衣装を着た副代表が、人気のない裏通りの片隅で誰かと話をしている。
(相手は誰だろう?)
コウの立っている場所に近付いて、覗き込んでみる。
(嘘……)
第二夫人だ!
副代表と第二夫人が、まわりを気にしながらひそひそと話し込んでいる。
(あの二人は、繋がってたの……?)
「行きましょ!」
私の腕を取って、コウが慌ててその場を立ち去ろうとする……。
そのまま、市場の出入り口を通り過ぎようとすると、木製の掲示板の前に人だかりができていた。
一瞬、目を合わせてから、二人でその輪を割って入っていく……。
そこには貼り紙があった。ところどころの文字は分かるけれど、意味がよく分からない。
同じように貼り紙を見つめるコウの顔は、凍り付いていた。
「どうしたの! なんて書いてあるの?」
私の問いに、コウが小さな声で応える。
「ホン一族に、謀反を企てた罪が問われてるわ。地主と手を組んで、乱を起こそうとした大逆罪って……。これは、お触れ書きよ」
「お触れ書き?」
「朝廷からの知らせ。だけど、ホン家が謀反だなんて、きっと何かの間違いよ!」
ホン家といったら、ジュンユン様や美咲さんの実家だ!
(謀反って、どういうこと? 一族全員が罪人なの?)
ふと、副代表と第二夫人が話し込んでいたことを思い出した。
(これって……、まさか!)
波打つ鼓動を抑えながら、私は走りだしていた。