彩国恋花伝〜白き花を、麗しき紅い華に捧ぐ〜
宝石商人が見えなくなるのと同時に、庭園の隅でこちらの様子を眺めている集団が視界に入った。
中央に立つのは第二夫人だ。
「宝石に浮かれている場合か!」
憎々しい表情で指輪を見つめながら、言葉を投げ付けてくる。
「はっ?」
(本当に、いつ会ってもムカつく女だ! でも、まぁ、今日は気分が良いから、相手にするのはやめておこう……)
第二夫人を無視して、そのまま部屋に戻ろうとする。
「親、兄弟が、罪人だというのに、宝石を着けている身分でもなかろう!」
(親、兄弟が罪人? どんだけ言い掛かりをつけたいの!)
「あんた、なに言ってんの!」
振り返って、第二夫人を睨み付けた。第二夫人も、恐ろしい眼力で睨み返している。
「お触れ書きを見ておらぬのか!」
「お触れ書き? いったい、何が言いたいの!」
頭の中で、試合開始を知らせるゴングが鳴った。
ミントグリーンの衣装を翻し、勢いよく庭園に下りようとする。
「ヨナお嬢様!」
背後で、いつもの声が響いた。
怒りの収まらない私の手を引いて、チヌが渡り廊下を足早に歩きだす。
「チヌ! ちょっと待って!! あいつを……」
「お触れ書きを、見に参りましょう」
チヌに引きずられるように、宮殿の中央にある本殿に入っていく……。
大広間の入り口に、手紙のような貼り紙がしてあった。
「そんな……」
みるみるうちに、チヌの顔が強張っていく……。
ズラリと漢字が並んでいるが、何が書いてあるのかさっぱり分からない。『罪』、という文字だけは、読み取れた。
「チヌ! なんて書いてあるの?」
「ホン様……、ホン一族に謀反の疑いが掛かっていると……」
「謀反?」
「そんな、そんなはずはありません。何かの間違いに決まっております! 只今、確認して参りますので、ヨナお嬢様はお部屋にお戻り下さい」
(ホン一族が謀反って……、えっ、あのうちの両親に似てる人達が、国王を裏切ったっていうの?)
「チヌ! 私も一緒に行く」
「お願いですから、お部屋でお待ち下さい! 早く、お連れして!」
入り口に立っている王宮の使用人達に強い口調で告げ、チヌが走り去っていく……。
後ろ姿を見るのは初めてだ。
頼り甲斐のある、カッコイイ背中だ。
「ヨナ様、お部屋に戻りましょう」
王宮の使用人二人に連れられ、南殿に戻りながら考える……。
(ホン一族が罪人っていうことは、私も罪人になっちゃうの? 何か、悪いことした?
あっ、まさか、違う世界の人間だってことがバレたとか? ヤバい! とにかくヤバい!! 早く、元の世界に帰らなきゃ!
だけど……、このダイヤモンドだけは、元の世界に持って帰りたいな)
薬指で燦然と輝くダイヤモンドを、しみじみと眺める……。
(あれ、ちょっと待って! ホン一族っていうことは、イケメン天使も罪人になっちゃうんじゃないの? まずい! それはまずいよ。本当に帰れなくなっちゃうじゃない!)
「ヨナ様、大丈夫ですか? お部屋に着いておりますが」
王宮の使用人達が、心配そうに覗き込んでいる。
「あっ、大丈夫!」
慌てて部屋に飛び込み、奥にある小机の前に座り込んだ。
それにしても、広い……。チヌが居ないこの部屋には、よそよそしい空気が漂いまくっている。
中央に立つのは第二夫人だ。
「宝石に浮かれている場合か!」
憎々しい表情で指輪を見つめながら、言葉を投げ付けてくる。
「はっ?」
(本当に、いつ会ってもムカつく女だ! でも、まぁ、今日は気分が良いから、相手にするのはやめておこう……)
第二夫人を無視して、そのまま部屋に戻ろうとする。
「親、兄弟が、罪人だというのに、宝石を着けている身分でもなかろう!」
(親、兄弟が罪人? どんだけ言い掛かりをつけたいの!)
「あんた、なに言ってんの!」
振り返って、第二夫人を睨み付けた。第二夫人も、恐ろしい眼力で睨み返している。
「お触れ書きを見ておらぬのか!」
「お触れ書き? いったい、何が言いたいの!」
頭の中で、試合開始を知らせるゴングが鳴った。
ミントグリーンの衣装を翻し、勢いよく庭園に下りようとする。
「ヨナお嬢様!」
背後で、いつもの声が響いた。
怒りの収まらない私の手を引いて、チヌが渡り廊下を足早に歩きだす。
「チヌ! ちょっと待って!! あいつを……」
「お触れ書きを、見に参りましょう」
チヌに引きずられるように、宮殿の中央にある本殿に入っていく……。
大広間の入り口に、手紙のような貼り紙がしてあった。
「そんな……」
みるみるうちに、チヌの顔が強張っていく……。
ズラリと漢字が並んでいるが、何が書いてあるのかさっぱり分からない。『罪』、という文字だけは、読み取れた。
「チヌ! なんて書いてあるの?」
「ホン様……、ホン一族に謀反の疑いが掛かっていると……」
「謀反?」
「そんな、そんなはずはありません。何かの間違いに決まっております! 只今、確認して参りますので、ヨナお嬢様はお部屋にお戻り下さい」
(ホン一族が謀反って……、えっ、あのうちの両親に似てる人達が、国王を裏切ったっていうの?)
「チヌ! 私も一緒に行く」
「お願いですから、お部屋でお待ち下さい! 早く、お連れして!」
入り口に立っている王宮の使用人達に強い口調で告げ、チヌが走り去っていく……。
後ろ姿を見るのは初めてだ。
頼り甲斐のある、カッコイイ背中だ。
「ヨナ様、お部屋に戻りましょう」
王宮の使用人二人に連れられ、南殿に戻りながら考える……。
(ホン一族が罪人っていうことは、私も罪人になっちゃうの? 何か、悪いことした?
あっ、まさか、違う世界の人間だってことがバレたとか? ヤバい! とにかくヤバい!! 早く、元の世界に帰らなきゃ!
だけど……、このダイヤモンドだけは、元の世界に持って帰りたいな)
薬指で燦然と輝くダイヤモンドを、しみじみと眺める……。
(あれ、ちょっと待って! ホン一族っていうことは、イケメン天使も罪人になっちゃうんじゃないの? まずい! それはまずいよ。本当に帰れなくなっちゃうじゃない!)
「ヨナ様、大丈夫ですか? お部屋に着いておりますが」
王宮の使用人達が、心配そうに覗き込んでいる。
「あっ、大丈夫!」
慌てて部屋に飛び込み、奥にある小机の前に座り込んだ。
それにしても、広い……。チヌが居ないこの部屋には、よそよそしい空気が漂いまくっている。