アイドルの秘密は溺愛のあとで


「萌々ちゃんが Ign:s を嫌う理由は分かった。

けど、萌々ちゃんが”嫌い”というその二文字の中に、俺たちの見えない努力があるって事を…頭の片隅に覚えていてほしいな」

「? どういう…」

「いずれ好きになってほしいって事だよ。 Ign:s をね」



バチッとウィンクをする玲央さん。トップアイドルの眩しい笑顔に「ウッ」と目を細めながらも、耳だけは正常に働く。


だから玲央さんが声を小さくした言葉も、しっかりと聞こえてしまった。



「まずは Ign:s を好きになって。次はレオ、そして最終的には――俺。少しずつ順番に、好きになってくれたらいいなって思うよ。皇羽よりも、たくさんね」

「え…?」

「じゃ、またね」



チュッ



そして私の頬にキスをした後、バタンと。玲央さんは家を後にした。


残された私は、ただ呆然とする他なく。キスされた頬を袖で拭きながら、こんな事を考える。

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