アイドルの秘密は溺愛のあとで
「おい萌々!なんだよ、どういう事だよ」
「すみません!なんでも、ないです…!」
トイレの扉をドンドン叩く皇羽さん。だけど私はそれどころじゃなくて…!
さっき自分がした事を思い返すと…。あぁ私、なんて事したの…!
さっき、私は…
「(ファンの子と自分の立場を比べて…優越感に浸ってた…っ)」
皇羽さんの隣に居られるのも、
皇羽さんと長く手を握れるのも、
皇羽さんとハグ出来るのも…
全部ぜんぶ私の特権だって…そう思っちゃった。
そして――同時に気づいてしまった。
それは私だけの特権であってほしいと。
私だけにしてほしい事だと。つまり、
私だけの皇羽さんでいてほしいと――
「そう言えば…」
喫茶店で玲央さんに言われた言葉を思い出す。
――彼女じゃありません!ただの同居人です!
――でも“好きな人”くらいには格上げされた?
あの時は「何言ってんの」くらいに思ってたけど。
まさか私…玲央さんの言葉通りになった?だから、こんなにも独占欲丸出しなの…!?
「(私が、皇羽さんを…好き…っ?)」
嘘でしょ、ありえない…!
反射的に自分の体をギュッと握る。すると、さっきまで皇羽さんに抱きしめられていた感触が戻ってきて…また顔が赤くなる。