アイドルの秘密は溺愛のあとで
キキィ――!!
車のブレーキ音が大きく響き、場の静寂をかき消す。
「おい!!」
突然に現れた新しい声に驚いたのは、男の人の方。抱きしめていた私を思い切り離し、距離をとる。
いきなり放り出された私は、その場にドサッと尻もちをついた。
そして涙を流しながら見上げた、その先にいたのは――
「やっぱり、野良猫ちゃん…!」
「(玲央、さん…っ?)」
黒いマスクの中で息を切らせていた、玲央さんだった。
「タクシーのヘッドライトが一瞬ここを照らしてくれて良かった…!見逃すところだったっ」
「~っ」
怖くて未だ声が出ない私を、ギュッと抱きしめてくれる玲央さん。
そして足が震えて動かないのと、安心したからか腰が抜けたようになった私。そんな私を見て、玲央さんは広い背中を私に見せる。
「乗って、ホラ」
「(ブンブン…っ)」
おんぶするから――と言われても…私なんかが乗っていいのかな?大丈夫…?
躊躇していると、玲央さんが男の方をチラリと見て「急いで」と私に耳打ちした。