アイドルの秘密は溺愛のあとで


キキィ――!!



車のブレーキ音が大きく響き、場の静寂をかき消す。



「おい!!」



突然に現れた新しい声に驚いたのは、男の人の方。抱きしめていた私を思い切り離し、距離をとる。


いきなり放り出された私は、その場にドサッと尻もちをついた。


そして涙を流しながら見上げた、その先にいたのは――



「やっぱり、野良猫ちゃん…!」

「(玲央、さん…っ?)」



黒いマスクの中で息を切らせていた、玲央さんだった。



「タクシーのヘッドライトが一瞬ここを照らしてくれて良かった…!見逃すところだったっ」

「~っ」




怖くて未だ声が出ない私を、ギュッと抱きしめてくれる玲央さん。


そして足が震えて動かないのと、安心したからか腰が抜けたようになった私。そんな私を見て、玲央さんは広い背中を私に見せる。



「乗って、ホラ」

「(ブンブン…っ)」



おんぶするから――と言われても…私なんかが乗っていいのかな?大丈夫…?


躊躇していると、玲央さんが男の方をチラリと見て「急いで」と私に耳打ちした。

< 256 / 423 >

この作品をシェア

pagetop