アイドルの秘密は溺愛のあとで


「玲央…萌々!」



いつもの聞きなれた声――皇羽さんが、私たちが来た同じ方向から、走って私たちに駆け寄る。



「皇羽さん、玲央さんが…!」

「!」



玲央さんの体調の悪さを一発で見抜いたのか、皇羽さんは素早く玲央さんの前に立つ。



「マスクとるぞ、玲央」



だけど――玲央さんは、皇羽さんの手を掴み離さない。そして…首を横へ、弱く振った。



「俺は…大丈夫…っ」

「そんな状態の玲央さんのどこが、」



そう言いかけた時。ちょうど同じマンションに帰って来た別の住人が使ったタクシーを、玲央さんが呼び止める。


そして尚もゴホゴホしながら、私の制止も聞かず乗り込んだ。

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