アイドルの秘密は溺愛のあとで
進行方向を見ていた母親が、何かを見つけて顔を歪める。
『あら、この先で事故だって。大丈夫かしらね…』
『あららー』
『まじだ』
前方にチラチラ見えるのは、事故処理車のランプ。皆に知らせるように派手に点灯していた。
「車は当分、動きそうにないわね」と母親がミラー越しに言う。
『じゃあ車降りて飲み物買っていい?面接で緊張して喉乾いた』
『あら皇羽でも緊張するのね。いいわよ、いってらっしゃい』
隣で「俺はコーラ」と言っている玲央を無視して、俺は車から降りた。
そして広場を横切って、
自販機に近づいた――
その時だった。
『すみません、良かったら…どうぞ!』
『……え』
見ると、おれよりも小さな女の子が。
幼い、まだ中学生だろう女の子が。
冬の寒い中で、鼻を真っ赤にさせてポケットティッシュを配っていた。
すごく美人で…何かの撮影か?この子は何かの役者か?って思う程。