アイドルの秘密は溺愛のあとで


『えと、あの…いらない…ですよね?すみません』

『! ちが、』



俺が見惚れている間に走って行ってしまいそうな女の子を、慌てて呼び止める。そして手を出して…ポケットティッシュをせがんだ。


すると女の子は、



『……えへへ、良かった。
これが最後の一個だったの』



そう言いながら、俺にポケットティッシュを手渡した。



『ありがとうございました!』



ペコリとお辞儀をしたその子は俺から離れて、もう一人のポケットティッシュを配っている女性の元へ急いだ。


その後「終わりました!」という元気な声が、俺の所まで聞こえる。



『モモちゃん、お疲れ様~!はいお給料!日給だから手渡しなんだよ~。落とさないようにね?』

『はい!ありがとうございました!』



ニッコリと満面の笑みを見せるその子――モモ、というらしい。


モモは大事そうに給料袋を抱えて、広場を後にする…かと思いきや…。

何かを見て立ち止まった。


それは、

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