アイドルの秘密は溺愛のあとで
『(やっぱり役者か…。さっきのあれは撮影だったんだろうな。カメラは見えない所にあったんだろ)』
そう思う俺の頭の片隅で。
もしも――が頭から離れない。
もしも撮影とかじゃなくて、あの子が本当にアルバイトをしているのだとしたら。
『(あんな可愛い子が…なんでだ…?)』
――ありがとうございました!
ニコリと、俺に微笑みかけてくれたあの笑顔が忘れられない。鼻の頭と、ほっぺを真っ赤にして…。
寒いだろうに、限界の中でも俺に笑いかけてくれた女の子。
名前は、モモ。
『モモって子…たすけてやりてぇな』
役者だって分かってる。そう思ってる。
けど……
もしもあの子が何か苦労してるなら。もしも、あの笑顔が雲る何らかの事情を抱えているなら。
俺の手で助けてやりたい。
そしてあの子を、
ずっと笑わせてやりたい――
そんな事を思った。