アイドルの秘密は溺愛のあとで
「正確には、Ign:s のデビュー曲が嫌いなんです」
「デビュー曲?」
「『Wish&』です」
「嫌いな割には、よく知ってるな」
「友達が Ign:s を大好きなだけです」
「ふーん」
大盛りパスタを注文した私とは反対に、コーヒーだけ飲む皇羽さん。それだけで絵になるから、イケメンってスゴイ。
「で?デビュー曲が嫌いなのは何でだよ。歌い方?ダンス?それとも…歌詞?」
「っ!」
「……マジ?」
最後の言葉で反応した私を、皇羽さんは目を開いて見た。驚いたような顔。
だけど、
少し経って、窓の外へ目をやる。そして「はぁ」と短く息を吐いて、それきり黙ってしまった。
えっと…勝手に喋れってことなのかな?
じゃあ遠慮なく…。
「歌詞に出てくる女の子…私と似てるんです。お金ない所とか、苦労してる所とか」
「…それで」