アイドルの秘密は溺愛のあとで
バタンッ
席からお手洗いまで、あまり距離がなかったというのに。気づけば、肩で息をしていた。心臓が、ドッドッドと忙しなく動いている。
「……ッ、はぁ~」
本当、
「皇羽さんって侮れない」
ポツリと呟いた私の言葉に、かぶさるように曲が流れる。それがまた、何というタイミングの悪さって言う程の選曲で…
「 Ign:s の『Wish&』。こんな時に流れなくても…」
仕方なく、頭の中で校歌を流す。多少 Ign:s の声がかき消されたその間に、足早にお手洗いを後にするのだった。