アイドルの秘密は溺愛のあとで
そして三十分後――何の収穫もないまま、使い過ぎた手だけが、無様に震えていた。
「はぁ、ちょっと休憩……ってか、すごい。手が真っ黒。ズボンも…。自分の服を着てきて良かった~」
マンションを出る直前。皇羽さんのオシャレ服は脱いで、自分の唯一の服を着た。
さすがの私も、火事現場に入ることがどれだけ汚れるかは心得ていたつもり……だけど、これは想像以上。
「日も沈んで来たし。もう帰ろうか…」
結局。見つからなかったな――そんな事を思っていた時だった。
「萌々!!」
「…え?」
遠くの方から、私を呼ぶ声が聞こえる。
一面炭の中から立ち上がって見渡すと、皇羽さんが私に向かって走ってきていた。