アイドルの秘密は溺愛のあとで
「え、皇羽さん⁉」
「萌々⁉やっと見つけた、お前――」
皇羽さんは「立ち入り禁止」のテープを簡単に飛び越え、一直線に私の元へ走る。そして、すごい剣幕で私を見た。
「どうした、何があった!」
「え、いや…何も…」
「何もなく、こんな焼け跡に来るわけねぇだろ!……怒らねぇから。何があった?」
「な……んでも、」
ないです――という言葉が、声にならなかった。
だって、すごい怖い顔だったからてっきり怒られるかと思っていたのに…なんで?なんでそんなに、私を心配してくれるの?
「(ダメだ…泣きそう…っ)」
焼け焦げる前。このアパートで、私を心配してくれる人は誰もいなかった。お母さんだって、高校に上がった私を「もう大丈夫ね」なんて言って、放ったらかした。
なのに、どうして?
どうして昨日会ったばかりの皇羽さんが、そんなに私の事を思ってくれるの?