アイドルの秘密は溺愛のあとで
「萌々?おい、まさかどこか怪我したんじゃ、」
「怪我、なんて…どこもしてません…っ」
「じゃあ…なんで泣いてんだよ」
「~泣いてませんッ」
「……あーそう」
頑なに、皇羽さんの優しさを拒否する私を――痺れを切らした皇羽さんが、ギュッと抱きしめた。その大きな手で、体で。力強く。
ギュゥゥゥ…
「ちょ、あの…く、苦しいです…!」
「何も言わずに家を飛び出して、こんな危ねぇ所に一人で来た罰だ」
「ば、罰って…!」
「うるせぇ。人の気も知らねぇで…。いいから、お前は黙って俺にこうされてろ」
「(な、に…それ…)」
ぶっきらぼうで、口も悪くて、そして乱暴。
私のいう事なんか聞いてくれない。そのくせ、自分のいう事は何が何でも聞かせようとする。
そんなとんでもない人が、私の同居人。
だけど…
――萌々!!
さっき、焼け焦げたアパートの中から私を見つけて駆け寄ってきてくれた皇羽さんが、王子様に見えたなんて…。
きっと、いや絶対、気のせいだ。