アイドルの秘密は溺愛のあとで


「(本当に、この人は…)」



部屋に入るなと言って私を突き放した後に、こうやって駆け寄ってきてくれる。侮れない人。



「やっぱり…イケメンはすることが違いますね」

「この寒空の中、薄着でも絵になるってことか?」

「……」



日が沈んだ帰り道。寒さで頭がマヒした皇羽さんを見ながら、お昼に交わした会話を思い出していた。



――その女の子には王子様みたいな人が現れて…人生大逆転。女の子は、誰よりも幸せになっちゃうんですよ

――王子様…俺にしちまえばいいじゃねーか。今までお前を不幸にしてきた責任とって、今度は俺がお前を幸せにしてやるよ



「……まさかね」



ハックシュン‼と横で盛大なクシャミが聞こえ、意識を戻す。


「ティッシュあるか?」と鼻を赤くした皇羽さん。それでもイケメンなんだから、悔しいったらない。



「あ、そこでティッシュ配りしているので、貰いますか?」

「いや、やめてくれ…ハックシュン!」



次の日。皇羽さんが風邪をひいたのは、言うまでもなかった。

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