アイドルの秘密は溺愛のあとで
「これは…勘弁してほしいな」
「……なんでですか?家の中だから帽子は脱いでも大丈夫でしょう?」
「ま、まぁ…そうなんだけど…。ほら、寒くて」
「! 分かりました。じゃあ、そのままで」
フカフカの羽毛布団をかけて、皇羽さんがたった今ぶら下げて帰って来た荷物を拝見する。
だけど、中身はグミとか唐揚げとか雑誌ばかりで。体温計の「た」の字もなかった。
「あなた何しに外に出たんですか⁉体温計も風邪薬も、全然買ってないじゃないですか!」
「え、だって元気だし…」
「まだそんな事言うんですか⁉皇羽さん今は熱あるんですよ⁉顔を真っ赤にして出て行ったくせに」
「! え、熱あんの?」
「……」
「お、俺…熱、あんの…?」
その言葉に「はぁ」とため息が出る。
「昨日、濡れた体で薄着で外に出たからです。風邪をひくのは当たり前でしょう?
もういいです、私が近くのお店で買ってきますから。皇羽さんはそのまま寝ててください」
「わ、かった…」
素直にベッドに頭を置いたのを見届けて、私は急いで家を出た。その時に、ある「違和感」を覚えながら。