秘密、ときめき ーあの日あの時あの場所で貴方に出会っていなければー

季節外れの転校生

「ここかぁ~‥‥‥」


私は目を細める。

目の前に立つのは、お城のように見える建物。



ここは今日から私が通う学校だ。



よく見ればところどころ塀や壁が傷ついていて、昔建立(こんりゅう)されたものだということがわかるが、そんなの目に留まらないほど、きれいな校舎だった。



やや丸みがかった窓のガラス。

ドーム状にふくらんだ屋根。

壁の表面には、植物の(つた)のような絵が装飾として彫られている。







え、ここホントに学校‥‥‥だよね?ね?




こ、こんな学校に通う人が‥‥‥‥‥

そのとき、ふっと後ろからハスキーな声が聞こえた。




「お、転校生か?話は聞いている。」






‥‥‥‥いらっしゃった。

いらっしゃったよこんなところに通う人が!!



えぇ?!ここってなんか重要文化財とかじゃなくて、ほんとに学校なの?!まぁじで?!

そう心のなかで(つぶや)いていると。




「おい‥‥‥‥何をブツクサ言っているんだ。ここはれっきとした学校だ。言うほど凄い建物でもねぇぞ?」


......
理解できない。次元違う。

いやだってね?今この人、なんて言った??

『凄い建物じゃない』的なこと言ったんだよ???







‥‥‥‥‥‥理解できる人、もしいたら挙手っ!!

私がブンブン頭を横に振っていると。




「おいおい‥‥‥‥頭の付きが悪いのか?」



そう言いながら手を上げる男性。


‥頭の付きが悪いってどゆことよ?





「おい‥‥‥‥さっきから全部口に出てんぞ?頭と口は直結してねぇだろ普通。馬鹿か。」









はぁ?!いきなり初対面の女子になんてこと言うやつなの?!そりゃぁ、地味だし馬鹿だし、間違ってないけど!!!!!

私馬鹿って言われるの嫌いだもん!好きな人いないと思う!




馬鹿と言われて頭に血が上った私は、キッとその男の人を睨むため、顔を上げた。



「お?どーした。」








‥‥‥‥‥‥‥うわぁ‥‥‥‥!!



目の前に立つその人を私は見つめる。


端正な顔立ち。



ブルー・ブラウンとでも言うべきなのか、暗い色の髪。



対象的に、影の下でも鮮やかに妖艶に光る紅い瞳は、私をじっと捉えていた。








「綺麗‥‥‥‥‥」








口からポロッと出た言葉にはっとした私は。





「あ、アンタのことじゃなくて、その後ろの花のことだから!!勘違いしないでねっ!!じゃあ!!」









捨て台詞のようにそう言い、バッと走り出した。






「お、おい!!‥‥‥‥花なんかねぇだろ‥‥‥それに、俺が案内役だったんだが‥‥‥なんだよアイツ。」







そう後ろで、その男の人が呟いていたとは知らずに‥‥‥‥
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