恋人たちの疵夏ーキヅナツー
雨やどり/その3
ケイコ


雨足はますます強くなってきた

まるで私たちをここに閉じ込めるように降ってる

それでもいいよって気分の、私

アキラは私の右側で少し下を向いている

そろそろ口を開きそうな感じ

なんて言ってくるのかな?

...


屋根の下には雨宿りの人が結構いる

カップルはくっついて話をしてる

私たちも結構くっついている

おっ、アキラが話しかけてきた

なんかチークタイムの雰囲気みたいだ

さあ、お話しを聞かせて、アキラ兄さん


...


アキラは「怖い」と言った

今の自分から一歩を踏み出すのが

怖くて怖くてしょうがないって

ほんとは逃げ出したいって

ん?当たり前じゃん、そのくらい

誰だってそうだよ、フツーだよ

こりゃ、やっぱり支えてやるわ、私

...

とりあえず、2週間後にオーディションか

形式だけで、大体は話が”通ってる”らしい

場所は大阪

朝早くから始まるって

なんなら私もついて行くか

とにかく元気が大事だ、こういう時は

で、言っちゃったよ、大胆に

「私の体でも抱いて元気になれば」って

雨は相変わらず元気に降ってる

...


じーっとアキラの目を見つめて言った

さあ、アキラの反応はどうかな

笑ってる!おい!

「こんなションベンくさい小娘じゃ、いやか」

まだにっこり笑ってる、おい!

「ケイコちゃんはションベン臭くないよ」

だって。それで?

「大阪でちゃんとできて帰ってきたら」

はっきりさせよう

「いるの?いらないの?私の体」

「もらうよ、戻ってきたら」

ま、成立ということでいいか

あっ、気が付いたら雨、止んでた



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