恋人たちの疵夏ーキヅナツー
果実たちの新たな発熱/その5
ケイコ


その館には、あの相馬豹一本人がいた

私らの決闘を止めに入ったのは剣崎さん

そのまま、麻衣と私は車で相和会本部に連れられた

相馬豹一は狂気と伝説の人だ

目の前に現れた相馬会長は上半身裸だった

初老だが、身長は180を超え、筋肉隆々だ

剣崎さんが事の経緯を告げると、会長は笑いながら言った

「麻衣、いいケンカ相手ができてよかったじゃねえか」

麻衣は野生動物のような鋭い視線で、会長を睨み付けてる

その反抗的な麻衣を、嬉しくてしょうがないという表情の会長

「お嬢ちゃん、どうだ、麻衣と一緒に地獄で遊んでみないか」

...


今から思えば、あの時の私は体もアタマもカッカしていた

夏にだけかかる熱病に冒された感じでもあった

そして、安易に同意した

麻衣はすでに数か月前からその”取引”を始めていた

相和会のドンから直接、無制限に近い”力”を与えられる

その代償が”錠剤”だ

だけど、卒業までには普通の女子高生に戻る

狂ってるとしか言いようのない取引条件

その夜から、私と麻衣はその狂ったルールを共有する仲になった

そして、私も会長の遠い”親類”の娘となった

麻衣よりもさらに遠い血縁ということで

ほとんど漫画のようなノリだ

でも相和会の人間は皆、信じてた、不思議だけど

...


麻衣と私が”正式”に南玉連合を仕切ることになったのは、今年の春からだ

やがてこの夏が来た





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