恋人たちの疵夏ーキヅナツー
惨夜の一室/その7
アキラ



ここで剣崎さんは、付け加えた

「残りの矢2本は、組織内のより政治的な部分でな。そっちも手配済だ。それで、建田さんは終わりになる。君の今までを考えれば、”向こうサイド”だろうが…。地上げの件でも実際、あの人からは使い捨てだ。今の自分を良く見てみろ。割切れ、そこは…。接触があっても、何も言うな。これは肝に銘じろ、いいな!」

ここで、テーブルには現金の束が音を立てて置かれた

「…コイツは今日の埋め合わせだ。無論、今の話を飲んでもらう分も含まれてる。質問がなければ、返事を聞かせてもらおう」

目の前に積まれた”もの”を見ながら、オレはまず、聞いた

「ケイコちゃんには、なんて言うんですか?」

「今のアイツに、君にもクスリ盛ったなんて言ったら、半狂乱になるだろうからな。この件が表沙汰になるタイミングで話す。ケイコも、君のことを第一に考えてるから、出る答えは見えてるしな。今日の件は、当面、この麻衣がケイコに会って繕っておくよ、最低限にとどめてな。でだ…、!コトが済むまで、君はケイコと会うな。あの子の為だぞ」

決断を迫られたオレは、答えた

「ギターの分だけもらいます。建田組、関係ないんで、ボクは…」

剣崎さんは表情を変えず、「そうか」とだけ言ったよ

しばらくの間、オレをサングラス越しでじっと見てから…、さらに話を続けた

「一応、念を押しとく。俺たちは口約束だろうが、結果は命のやり取りだ。今の言葉忘れれば、そっちは命で払うことになるぞ。もちろん、ケイコも対象に含まれる。大丈夫だな?」

オレは無言で頷いた

言ってる意味は十分、承知しているって!

冷静に考えて、この状況ではオレたち二人の現実的な選択ってことだろう

納得できないこと多いが、悔しいが…

麻衣は、カウンターチェアに座って薄笑い浮かべてる

こいつ、ケイコちゃんが言ってた通りだった

相和会も巻き込むことやらかすって

ふふ、皮肉なもんだ、それの的がオレだったなんて…

間抜けだな、オレ

「話は終わった。それと、さっきのは症状の心配いらない程度にしてある。安心していい」

そう言うと、剣崎さんは席を外し、外から男たちが戻ってきた

ふと、店の窓に目をやると、外はもう白み始めてる







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