恋人たちの疵夏ーキヅナツー
盛夏の傷痕
盛夏の傷痕/その1
コントラスト
夏休み中の日曜日とあって、ここ豊島園も、家族連れやカップルで人が溢れていた。
冷夏とはいえ、晴れた日の陽射しは午前中から厳しい。
薫と絵美は、カップのシャーベットアイスを手に、ジェットコースター乗り場前でベンチに掛けている。
「だいたいこの暑いのに、遊園地なんて気乗りしなかったんだよ。まったくさ、来てないじゃん、あのお兄さん。詐欺だよ、これ」
薫は不機嫌そうに言った。
「えーと、香月さんだったっけ。なんか、急に仕事になっちゃったって、今朝連絡あったらしいってね」
絵美がこう言うと、薫は首を大きく横に振った。
「嘘だよそれ、最初から誘ってないんじゃないの?」
「まあ、胸の大きな薫のことは、みんなお目当てみたいだしね。とにかく来させてたかったんだよ、あんたを」
絵美は苦笑いして言った。
「それに、おけいが来ないと盛り上がらないよ、やっぱし。たしか絵美が誘ったんだっけ?この前、会った時」
「うん、神社、一緒にいった時ね。今日は予定あるって…。そういえばさ、おけい、好きな人できたみたいだよ」
薫の反応は早かった。
「えー、本当?どんな人?おけいの彼氏って。年は?」
矢継ぎ早に問いただしてくる薫に、絵美はクスッと、思わず声を出して笑ってしまった。
「あのさー、詳しいことは言わないんだよ、照れちゃって。でも、真剣に願い事しててさ。あれ、好きな人のことだよ、絶対。今度、薫と一緒に会いに行くからって、言っといた」
「会わせてもらったら、その人の紹介も期待できるかもね?夏休み中に行こうよ」
「そうだね」
二人は食べ終わったアイスのカップを、近くのごみ箱に捨てた。
ジェットコースター乗ってる陽子たちがそろそろ、戻ってくる頃だ
「おけい、今日その人とデートだね。今頃ラブラブだよ、きっと。やだー」
「それに比べて、私ら、冴えないお兄さんたちと集団デートか…。まだ11時前でこんなに暑いし…。羨ましいな、おけいが…」
絵美と薫は、そんな会話のやりとりで、他のみんなを待っていた。
...
”10時過ぎたのか、もう…。アキラ、会場に着いたころかな”
ケイコは壁に張ってある、アキラと二人の写真を前にして、頭の中で呟いた。
写真を留めてあるピン状の赤い画鋲には、昨日アキラから受け取った、お守りも引っ掛けてある。
ケイコは、昨夜はほとんど眠れなかった。
正確には、起きているのか眠っているのか微妙な感覚のまま、朝を迎えていた。
”そういえば薫や絵美は、海で出会った集まりで豊島園にいるはずだ、今日は”
アキラと再会したあの時も今日も、同じだ…。
奇しくも、そのいずれの日も、二人を除いたメンバーが集まっているのだ。
自分たち以外の11人、みんなは今頃、ジェットコースターでも乗って、はしゃいでいることだろう…。
海では、花火やったり夜の山道ドライブしたり、13人全員がはしゃいでたのに…。
ケイコはこのコントラストの妙を、感じずにはいられなかった。
”偶然がいくつか重なった結果、数週間でこんなにも変わるもんなのかな…”
ケイコは壁のツーショットを眺ながら、頭の中でそんな思いを巡らせていた…。
コントラスト
夏休み中の日曜日とあって、ここ豊島園も、家族連れやカップルで人が溢れていた。
冷夏とはいえ、晴れた日の陽射しは午前中から厳しい。
薫と絵美は、カップのシャーベットアイスを手に、ジェットコースター乗り場前でベンチに掛けている。
「だいたいこの暑いのに、遊園地なんて気乗りしなかったんだよ。まったくさ、来てないじゃん、あのお兄さん。詐欺だよ、これ」
薫は不機嫌そうに言った。
「えーと、香月さんだったっけ。なんか、急に仕事になっちゃったって、今朝連絡あったらしいってね」
絵美がこう言うと、薫は首を大きく横に振った。
「嘘だよそれ、最初から誘ってないんじゃないの?」
「まあ、胸の大きな薫のことは、みんなお目当てみたいだしね。とにかく来させてたかったんだよ、あんたを」
絵美は苦笑いして言った。
「それに、おけいが来ないと盛り上がらないよ、やっぱし。たしか絵美が誘ったんだっけ?この前、会った時」
「うん、神社、一緒にいった時ね。今日は予定あるって…。そういえばさ、おけい、好きな人できたみたいだよ」
薫の反応は早かった。
「えー、本当?どんな人?おけいの彼氏って。年は?」
矢継ぎ早に問いただしてくる薫に、絵美はクスッと、思わず声を出して笑ってしまった。
「あのさー、詳しいことは言わないんだよ、照れちゃって。でも、真剣に願い事しててさ。あれ、好きな人のことだよ、絶対。今度、薫と一緒に会いに行くからって、言っといた」
「会わせてもらったら、その人の紹介も期待できるかもね?夏休み中に行こうよ」
「そうだね」
二人は食べ終わったアイスのカップを、近くのごみ箱に捨てた。
ジェットコースター乗ってる陽子たちがそろそろ、戻ってくる頃だ
「おけい、今日その人とデートだね。今頃ラブラブだよ、きっと。やだー」
「それに比べて、私ら、冴えないお兄さんたちと集団デートか…。まだ11時前でこんなに暑いし…。羨ましいな、おけいが…」
絵美と薫は、そんな会話のやりとりで、他のみんなを待っていた。
...
”10時過ぎたのか、もう…。アキラ、会場に着いたころかな”
ケイコは壁に張ってある、アキラと二人の写真を前にして、頭の中で呟いた。
写真を留めてあるピン状の赤い画鋲には、昨日アキラから受け取った、お守りも引っ掛けてある。
ケイコは、昨夜はほとんど眠れなかった。
正確には、起きているのか眠っているのか微妙な感覚のまま、朝を迎えていた。
”そういえば薫や絵美は、海で出会った集まりで豊島園にいるはずだ、今日は”
アキラと再会したあの時も今日も、同じだ…。
奇しくも、そのいずれの日も、二人を除いたメンバーが集まっているのだ。
自分たち以外の11人、みんなは今頃、ジェットコースターでも乗って、はしゃいでいることだろう…。
海では、花火やったり夜の山道ドライブしたり、13人全員がはしゃいでたのに…。
ケイコはこのコントラストの妙を、感じずにはいられなかった。
”偶然がいくつか重なった結果、数週間でこんなにも変わるもんなのかな…”
ケイコは壁のツーショットを眺ながら、頭の中でそんな思いを巡らせていた…。