恋人たちの疵夏ーキヅナツー
盛夏の傷跡/その7
剣崎


すべて膿を出し切る、これは県警も政治家も、何より望んでることだ

それがあるから、あっちも全面協力してくれる

自分たちの安全の為にも必死でやる、だから今回、一気に決着できるんだ

叔父貴にはこれが決定打になるだろう

不祥事で火ダルマの2代目にその嫌疑なら、大掃除できる

明石田さんも、さすがに、目の前の状況で判断する

”2代目”を切り捨てること以外、選択肢がないと…

組内もそこで落ち着くだろう…、無論、反対勢力は残るだろうが

それは、後々でも然るべき対処はできるというものだ

...


「それで、クスリの件、誰を出すんだ?」

矢島さんも、このことが一番の気になるところのようだ

俺は率直に告げた

「麻衣が病院に行ってということで、概ね…」

「そうか…。だが、奴のフライングとか、大丈夫なのか?本当に」

「ええ、その辺は十分…。監視も最後まで」

「よし。それで、お前に云々はないんだが、一応、念ということもある。麻衣が建田サイドに忍んだ”足跡”、見せてもらえるか。余分な心配かも知れんが、ここまでくると、気が気じゃない。正直な」

ここで、矢島さんは居間にある小型の冷蔵庫から、ビールを2本持ってきた

栓を抜いて、オレのグラスに勢いよく注ぎながら、話を続けた

「奴は何でもアリということなんだろ?お前の見立てじゃ。オヤジと一緒だと…。奴が仕入れた”材料”、チェックするに越したことはないぞ」

さすがだ、その通りだ

麻衣のことはそこまでやらないといけないな、やぱり

ヤツはただのガキじゃない、俺たちを手玉に取るくらいの”器量”はある

この上は、オレ以外の目で”洗う”のが肝要だろう

「じゃあ、2,3日中に倉橋に届けさせますよ」

「ああ、頼む」

...


ここにきて麻衣は、日々、相馬豹一に近づいてる感さえする

油断は禁物ということだ

監視つけてるのは、ヤツも承知だろうし

こっちも大事なとこだ…







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