恋人たちの疵夏ーキヅナツー

ケイコとアキラのいない風景

ケイコとアキラのいない風景




(以下、埼玉県よりの某ファミレス店内)


「絵美、薫ー…、遅かったじゃん!」

「うん、ごめんねー、はは…」

「おー、薫ちゃん…!待てったよ…」

「あ…、ええ。どうも…」

「それに、絵美ちゃん、この前はお世話様。…さあ、二人とも、そこ座って」

「よし、これでみんな揃ったから…。おお、光男、写真出せよ…」

「ああ…」


***


「ちょっと…、絵美。これで全員って…。あの人いないじゃん!」

「そうみたいだね」

「絵美から突っ込んでみてよ、男性軍にさ…」

「えー?」

「早く…!」

「もう…!」

(以上、小声)


***


「あの…、私たち側はおけいが欠席なんだけど…。そちらは…、ええと、やはり一人いないですかね?」

「…ああ、アキラね。アイツはさ、なんか…、仕事みたいでさ。なあ…」

「おお、アキラは仕事だって言ってたな」

「日曜日なのにですか…?」

「うん…。アイツ、土日休みの会社勤めてたけど、辞めてね…。今はなんだかライブハウスとかでバイトとか言ってたな…。だから今日は都合悪いそうだわ」


***


「…ああ、陽子、お帰りー(苦笑)」

「あれれ…?なんだか、盛り上がってないわね。写真、どーしたのよ?」

「アキラさんが来てないから、絵美と薫ががっかりしててさ…(苦笑)」

「ああ、あの人…、なんか浮いてたもんねー。絵美、薫…、あの人がいなくてがっかりなの?」

「そんなじゃ…。ねえ、薫」

「うん…。でも、私たちが知り合えたきっかけは、アキラさんだったんだし…。だから、フツーはその人の予定を優先するでしょ?なのに…」


***


「そう言われれば、薫の言うとおりね。…ねえ、皆さんは最初からそのアキラさんが土日来れないの知ってて、今日の日程をセットしたってことですなんでね?」

「…、ああ、まあ、その辺は、なぁ…、俊夫」

「うーん…。あのね、お嬢さんがた…、あのアキラはさ、あんまりみんなでワイワイガヤガヤは好きじゃないんだよね。今回の千葉の海だって、本当はアイツ、メンバーじゃなったんだ。一人、予定が付かなかったんで、欠員の”補欠”として声かけただけだから。だから、ねえ…」

「そうそう、アイツ、高校時代からそう言う役回りだったしね、ハハハ…」

(陽子がニヤリ)


***


「…ひょっとして、アキラさんに今日の集まり、声かけなかったとかってこと…、まさか、ないですよね!」

「…」


(薫の突っ込みに男性軍、一同顔面蒼白)





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