少女達の青春群像 ~舞、その愛~
2年5組の物理担当である佐伯先生は、黒板に書く文字数が多い。しかもすぐに黒板が埋まってしまうので、うかうかしているとすぐに文字を消されてしまう。
響歌達はいつもこの時間はノートをとるだけで精一杯だった。
1年の時の物理担当の先生とは大違いだ。同じ科目でも教師によってこうも違うのかと思い知らされる。
今も、教科書に書いてある質問の説明をしながらも、手を休めることなく文字を書き並べていっている。内職をする暇も無い。
だが、今日の響歌は、そんな佐伯先生の授業にも集中できずにいた。ノートもとらずにぼんやりとしている。
そんな響歌の机に前方から4つ折りになったルーズリーフが飛んできた。飛んできた先には紗智がルーズリーフを指している。どうやら紗智からの手紙らしい。
最近、生徒達の間で授業中の手紙のやり取りが増えていた。それでも紗智がそれに参加するのは稀だったので、響歌は驚いてしばらく紗智から目が離せなかった。
紗智はすぐ授業に戻ったので、今は背中しか見えない。その後ろの真子は、自分の前の席である紗智の行動にも気づかず、熱心に何かを書いている。
高尾の彼女のことを知ったすぐ後の授業だ。しかも真子を通さずに放り投げるようにして響歌に渡した。ということは、手紙の内容は真子関係のことなのだ。
響歌はそのことに気づき、急いで手紙に目を通した。
『まっちゃんが鬱憤晴らしに紙に落書きすると言っていた。何を鬱憤晴らしするのかと訊くと、色々あるでしょという答えが返ってきた。もしかして高尾君に関することではないかと思ってしまった。これからどうしよう。強引にでも諦めさせた方がいい?』
疑問形で終わられても…ねぇ。
本当に、これからどうしよう。
響歌の隣では、真子が相変わらず熱心に何かを書いている。紗智に言ったように落書きでもしているのだろうか。何に対しての鬱憤なのかは、紗智の予想通りなのだろう。
それで本当に鬱憤が晴れたらいいんだろうけどねぇ。
まっちゃんも鬱憤を晴らすのならもっと違う形で晴らしたらいいのに。
まぁ、まっちゃんらしい晴らし方だとは思うけど。
響歌が呆れて真子を見ていると、今度は後ろから響歌の肩を突く者がいた。亜希だった。
響歌が振り向くと同時に、響歌にメモ用紙を渡す。今度は亜希からの手紙らしい。
響歌はその手紙を受け取ると、すぐに前を向いた。
佐伯先生は確実に生徒よりも黒板を見ている時間の方が長い癖に、背中にも目があるのか生徒達の授業中の態度をかなり把握していた。
サボっていればすぐに見つかる。だから生徒側も授業に集中するフリをしなくてはいけない。
亜希からの手紙は紗智とは違って1行文だった。これは手紙というよりも、これから文字で会話するぞといった亜希からのメッセージだ。
今はそんな気分じゃないんだけどな。
そう思いながらも、文字に目を通して驚いた。
『私、実をいうと、まっちゃんは下田君のことが好きなんじゃないかと思っているんです』
何故、敬語!
何故、下田君!
2、3文字で終わらせるつもりだったが、気が変わった。
手紙用のペンを出して亜希からの文の下に文字を書き始める。それでも会話のやり取りをするわけではない。
響歌は昼休みに亜希を呼び出すことにしたのだ。
響歌達はいつもこの時間はノートをとるだけで精一杯だった。
1年の時の物理担当の先生とは大違いだ。同じ科目でも教師によってこうも違うのかと思い知らされる。
今も、教科書に書いてある質問の説明をしながらも、手を休めることなく文字を書き並べていっている。内職をする暇も無い。
だが、今日の響歌は、そんな佐伯先生の授業にも集中できずにいた。ノートもとらずにぼんやりとしている。
そんな響歌の机に前方から4つ折りになったルーズリーフが飛んできた。飛んできた先には紗智がルーズリーフを指している。どうやら紗智からの手紙らしい。
最近、生徒達の間で授業中の手紙のやり取りが増えていた。それでも紗智がそれに参加するのは稀だったので、響歌は驚いてしばらく紗智から目が離せなかった。
紗智はすぐ授業に戻ったので、今は背中しか見えない。その後ろの真子は、自分の前の席である紗智の行動にも気づかず、熱心に何かを書いている。
高尾の彼女のことを知ったすぐ後の授業だ。しかも真子を通さずに放り投げるようにして響歌に渡した。ということは、手紙の内容は真子関係のことなのだ。
響歌はそのことに気づき、急いで手紙に目を通した。
『まっちゃんが鬱憤晴らしに紙に落書きすると言っていた。何を鬱憤晴らしするのかと訊くと、色々あるでしょという答えが返ってきた。もしかして高尾君に関することではないかと思ってしまった。これからどうしよう。強引にでも諦めさせた方がいい?』
疑問形で終わられても…ねぇ。
本当に、これからどうしよう。
響歌の隣では、真子が相変わらず熱心に何かを書いている。紗智に言ったように落書きでもしているのだろうか。何に対しての鬱憤なのかは、紗智の予想通りなのだろう。
それで本当に鬱憤が晴れたらいいんだろうけどねぇ。
まっちゃんも鬱憤を晴らすのならもっと違う形で晴らしたらいいのに。
まぁ、まっちゃんらしい晴らし方だとは思うけど。
響歌が呆れて真子を見ていると、今度は後ろから響歌の肩を突く者がいた。亜希だった。
響歌が振り向くと同時に、響歌にメモ用紙を渡す。今度は亜希からの手紙らしい。
響歌はその手紙を受け取ると、すぐに前を向いた。
佐伯先生は確実に生徒よりも黒板を見ている時間の方が長い癖に、背中にも目があるのか生徒達の授業中の態度をかなり把握していた。
サボっていればすぐに見つかる。だから生徒側も授業に集中するフリをしなくてはいけない。
亜希からの手紙は紗智とは違って1行文だった。これは手紙というよりも、これから文字で会話するぞといった亜希からのメッセージだ。
今はそんな気分じゃないんだけどな。
そう思いながらも、文字に目を通して驚いた。
『私、実をいうと、まっちゃんは下田君のことが好きなんじゃないかと思っているんです』
何故、敬語!
何故、下田君!
2、3文字で終わらせるつもりだったが、気が変わった。
手紙用のペンを出して亜希からの文の下に文字を書き始める。それでも会話のやり取りをするわけではない。
響歌は昼休みに亜希を呼び出すことにしたのだ。