少女達の青春群像 ~舞、その愛~
今日も6時間目が終了した。早く帰る用意をしないと響歌が4組に来てしまう。
そう頭ではわかっているのだが、舞の動きは遅かった。
「…ふうっ」
口からは溜息まで出ている。
歩が心配して舞を急かす。
「ムッチー、そんなにのんびりしていていいの?早くしないと響ちゃんが来るよ」
あぁ、そうだった。そうだったのよ。響ちゃんを待たせるわけには…
そう思いながらも、一向に準備が進んでいない。
そうこうしているうちに、響歌が4組にやってきた。
「ムッチー、帰るわよ。って、何よ、帰る用意が全然できていないじゃない。早くしなさいよ。あの人ももうすぐここに来るわよ」
その言葉で、我に返る。
「あっ、そうだよね。待たせてごめん。すぐに用意するから!」
その言葉通り、舞があっという間に帰る用意をする。そして2人揃って逃げるように4組から飛び出した。
歩は呆れながら、それでも今日の無事を願って、その後ろ姿を見送った。
2人とは入れ違いのような感じで中葉が4組に現れた。誰かを探すかのように視線をせわしなく動かしている。それでも目当ての人物がいないとわかると、肩を落として教室から出て行った。
歩はなんだか可哀想になってきたが、仏心を出すわけにはいかない。舞達が放課後にゆっくりできないようになったのはすべて彼のせいなのだから。
まぁ、ムッチーが一度よりを戻そうとしなければ、まだここまでにはなっていなかったのだけど…ね。
この後、中葉がどこに行ったのかは、歩にはわからない。
だが、舞と響歌は今日も中葉に捕まらないように、電車の時間ギリギリまで焼却炉の裏にいた。それでも今日の舞は、いつもとは違ってぼんやりしていた。返事は一歩ズレているし、行動もいつもより遅かった。
2人は急いで駅に向かっていた。特に今日は舞が遅いせいで数分遅れている。もしかしたら途中で追いつかれるかもしれない。これまでにもこういったことは何回もあったのだから。
無言で足を動かしていると、後ろから足音が聞こえてきた。
この音は!
2人は顔を見合わせると、今まで以上にスピードをあげた。それでも走ると逃げているのが完璧にバレるので、歩く範囲を超えていない。
足音が2人に近づいてくる。
このスピードだと、追いつかれてしまう。
響歌が覚悟を決めて振り返った。
「なんだぁ、川崎君か。ヌラリンかと思った」
えっ、テツヤ君!
響歌の足は既に止まっている。
舞も足を止めて振り返ってみた。
その瞬間、目に飛び込むカッコイイ彼の姿。
それでもその顔は、とても歪んでいた。
「…止めてくれ」
川崎は中葉に間違えられたことが相当嫌だったようだ。
「ごめん、ごめん。でも、歩くスピードが一緒だったんだもの。間違えても仕方がないよ。あんた達って全然似ていないけど、歩くスピードは同じなのね」
響ちゃん…それ、火に油を注いでいるよ。
そう思いながらも、無言を貫く舞。
だが、その目はやはり目の前にいる彼に釘づけ状態だ。
そんな舞の前で2人は少しの間話しをすると、川崎は先に行ってしまった。
はぁ…後ろ姿もカッコイイ。
舞が川崎に見惚れていると、響歌に肩を叩かれた。
「いたっ、響ちゃん、何をするのよ!」
「ボケッ~としているんじゃないわよ。私達も早く行くわよ。ただでさえ今日はあんたのせいで出遅れているんだから」
あっ、そうだった。こんなところで足を止めている場合じゃない。
「そ、そうだね。ごめん。電車に乗るまで安心できないよね」
慌てて謝ると、再び早足で歩き始める。
そんな舞を、響歌は疑心の目で見ていたが、何も言わずに舞に続いた。
そうして一応は急いだお陰で、寸でのところで中葉を撒けたのだった。
電車に乗った舞の目に、宮内駅行を哀しそうに見つめる中葉の姿が目に入ったが、可哀想だという気持ちは一切起こらない。安堵しかしなかった。
そう頭ではわかっているのだが、舞の動きは遅かった。
「…ふうっ」
口からは溜息まで出ている。
歩が心配して舞を急かす。
「ムッチー、そんなにのんびりしていていいの?早くしないと響ちゃんが来るよ」
あぁ、そうだった。そうだったのよ。響ちゃんを待たせるわけには…
そう思いながらも、一向に準備が進んでいない。
そうこうしているうちに、響歌が4組にやってきた。
「ムッチー、帰るわよ。って、何よ、帰る用意が全然できていないじゃない。早くしなさいよ。あの人ももうすぐここに来るわよ」
その言葉で、我に返る。
「あっ、そうだよね。待たせてごめん。すぐに用意するから!」
その言葉通り、舞があっという間に帰る用意をする。そして2人揃って逃げるように4組から飛び出した。
歩は呆れながら、それでも今日の無事を願って、その後ろ姿を見送った。
2人とは入れ違いのような感じで中葉が4組に現れた。誰かを探すかのように視線をせわしなく動かしている。それでも目当ての人物がいないとわかると、肩を落として教室から出て行った。
歩はなんだか可哀想になってきたが、仏心を出すわけにはいかない。舞達が放課後にゆっくりできないようになったのはすべて彼のせいなのだから。
まぁ、ムッチーが一度よりを戻そうとしなければ、まだここまでにはなっていなかったのだけど…ね。
この後、中葉がどこに行ったのかは、歩にはわからない。
だが、舞と響歌は今日も中葉に捕まらないように、電車の時間ギリギリまで焼却炉の裏にいた。それでも今日の舞は、いつもとは違ってぼんやりしていた。返事は一歩ズレているし、行動もいつもより遅かった。
2人は急いで駅に向かっていた。特に今日は舞が遅いせいで数分遅れている。もしかしたら途中で追いつかれるかもしれない。これまでにもこういったことは何回もあったのだから。
無言で足を動かしていると、後ろから足音が聞こえてきた。
この音は!
2人は顔を見合わせると、今まで以上にスピードをあげた。それでも走ると逃げているのが完璧にバレるので、歩く範囲を超えていない。
足音が2人に近づいてくる。
このスピードだと、追いつかれてしまう。
響歌が覚悟を決めて振り返った。
「なんだぁ、川崎君か。ヌラリンかと思った」
えっ、テツヤ君!
響歌の足は既に止まっている。
舞も足を止めて振り返ってみた。
その瞬間、目に飛び込むカッコイイ彼の姿。
それでもその顔は、とても歪んでいた。
「…止めてくれ」
川崎は中葉に間違えられたことが相当嫌だったようだ。
「ごめん、ごめん。でも、歩くスピードが一緒だったんだもの。間違えても仕方がないよ。あんた達って全然似ていないけど、歩くスピードは同じなのね」
響ちゃん…それ、火に油を注いでいるよ。
そう思いながらも、無言を貫く舞。
だが、その目はやはり目の前にいる彼に釘づけ状態だ。
そんな舞の前で2人は少しの間話しをすると、川崎は先に行ってしまった。
はぁ…後ろ姿もカッコイイ。
舞が川崎に見惚れていると、響歌に肩を叩かれた。
「いたっ、響ちゃん、何をするのよ!」
「ボケッ~としているんじゃないわよ。私達も早く行くわよ。ただでさえ今日はあんたのせいで出遅れているんだから」
あっ、そうだった。こんなところで足を止めている場合じゃない。
「そ、そうだね。ごめん。電車に乗るまで安心できないよね」
慌てて謝ると、再び早足で歩き始める。
そんな舞を、響歌は疑心の目で見ていたが、何も言わずに舞に続いた。
そうして一応は急いだお陰で、寸でのところで中葉を撒けたのだった。
電車に乗った舞の目に、宮内駅行を哀しそうに見つめる中葉の姿が目に入ったが、可哀想だという気持ちは一切起こらない。安堵しかしなかった。