少女達の青春群像 ~舞、その愛~
舞と響歌は丘の上に建つ家の前にいた。柏原駅から歩いて1時間。長い道のりだったが、家を見つけたらそんな疲れも吹き飛ぶというもの。
早速、響歌が手に持っていた可愛らしい封筒をその家のポストに投函する。これで今日やるべきことの一つは完了した。
それでも休んでいる暇は無い。この後にメインが待っている。
家の近くの公園にも寄った。明るいうちにどこに何があるのか確認しておきたかったのだ。それでもそれはすぐに終わったので足早に市街地へと向かう。公園で休憩したいところだが、少し時間が押している。グズグズしていられない。
急ぎはしたものの、約束の時間を30分過ぎていた。目的地に到着してインターホンを押すと、家の奥からバタバタと足音を響かせて歩がやってきた。
「2人共、遅い。何やってたの!」
事前に少し遅れるとは伝えていたものの、やはり責められてしまった。
「ごめんね、歩ちゃん。ちょっとあるところに寄っていたら遅くなってしまって…」
舞が申し訳なさそうにしながら謝った。
「ほんと、ごめんね。下調べをしていたらすっかり遅くなっちゃった」
響歌の方は一応謝ってはいるが、あまり悪いとは思っていなさそうだ。それにそんな言い方をしたら誰でも気になってくるというもの。
「下調べって、何をしていたの?」
もちろん歩も気になって、響歌に訊いてきた。
響歌は鞄からスマホを出すと、それを何回かタップしてから歩に見せる。
「ほら、これ、細見家の周辺の画像。後で歩ちゃんのスマホに送っておくね。この公園が、歩ちゃんが細見さんを呼び出す公園。私は一緒にここまで行くけど、公園に着いたら右端にある植木のところに隠れているわ。隠れるにはそこが一番良さそうだったんだよね」
2人が遅れてきたのは細見の家に行っていたからだった。その目的は、公園の下調べと、確実に細見の手に歩の手紙が渡るよう細見家のポストに直接手紙を投函することだった。
歩はここから細見の家までの距離を知っていたので、2人の話を聞いて驚いた。
「あそこまで行っていたんだ。もちろん歩いてだよね。時間がかかったでしょ!」
だからこうして時間に遅れてしまったのだ。
「この通り、約束の時間には遅れたけどね。でも、1時間くらいなら大丈夫よ。私らって結構歩いているからさ」
響歌がそう言えば、舞もそれに続く。
「そうだよ、全然平気だったよ。伊達に鍛えられてないからね」
確かにそうかもしれない。歩は声にこそ出さなかったが、すぐに納得してしまった。
それに今はそんなことを話している場合ではない。泊まりとはいえ、時間には限りがあるのだ。
「じゃあ、キッチンに案内するね。それと今日はお母さんの調子が悪くて奥で寝ているんだ。だから夕飯は用意できないの。ごめんね」
歩が謝ると、響歌が慌てた。
「夕飯なんて、最初からいらないって。近くには店がいっぱいあるんだから、そこで適当に食べようよ」
舞も響歌と同じ意見だ。
「そうだよ。用意してもらったら、かえって気が引けてしまうよ。気楽にどこかで食べよう」
2人ならそう言ってくれるとは思ったが、歩は実際に聞いて安心した。
「じゃあ、チョコ作りが終わったら、国道沿いのファミレスに行こう。お礼に、今日は私がおごるね」
「えっ、それは申し訳ないよ」
「そうだよ。それだったら、コンビニで適当に買って食べようよ」
2人は遠慮したが、そこは歩が強引に押し通した。
「いいの、今日は私が払う。せっかくここまで来てくれたんだもの。これくらいはさせて欲しい。私の為に細見さんのことで色々動いてもくれたんだから、ここは素直におごられておいて!」
まぁ、歩ちゃんがそういうのなら、いいかな。
今日は素直に甘えておこうか、響ちゃん。
2人は目と目で会話を交わすと、歩の好意に甘えたのだった。
早速、響歌が手に持っていた可愛らしい封筒をその家のポストに投函する。これで今日やるべきことの一つは完了した。
それでも休んでいる暇は無い。この後にメインが待っている。
家の近くの公園にも寄った。明るいうちにどこに何があるのか確認しておきたかったのだ。それでもそれはすぐに終わったので足早に市街地へと向かう。公園で休憩したいところだが、少し時間が押している。グズグズしていられない。
急ぎはしたものの、約束の時間を30分過ぎていた。目的地に到着してインターホンを押すと、家の奥からバタバタと足音を響かせて歩がやってきた。
「2人共、遅い。何やってたの!」
事前に少し遅れるとは伝えていたものの、やはり責められてしまった。
「ごめんね、歩ちゃん。ちょっとあるところに寄っていたら遅くなってしまって…」
舞が申し訳なさそうにしながら謝った。
「ほんと、ごめんね。下調べをしていたらすっかり遅くなっちゃった」
響歌の方は一応謝ってはいるが、あまり悪いとは思っていなさそうだ。それにそんな言い方をしたら誰でも気になってくるというもの。
「下調べって、何をしていたの?」
もちろん歩も気になって、響歌に訊いてきた。
響歌は鞄からスマホを出すと、それを何回かタップしてから歩に見せる。
「ほら、これ、細見家の周辺の画像。後で歩ちゃんのスマホに送っておくね。この公園が、歩ちゃんが細見さんを呼び出す公園。私は一緒にここまで行くけど、公園に着いたら右端にある植木のところに隠れているわ。隠れるにはそこが一番良さそうだったんだよね」
2人が遅れてきたのは細見の家に行っていたからだった。その目的は、公園の下調べと、確実に細見の手に歩の手紙が渡るよう細見家のポストに直接手紙を投函することだった。
歩はここから細見の家までの距離を知っていたので、2人の話を聞いて驚いた。
「あそこまで行っていたんだ。もちろん歩いてだよね。時間がかかったでしょ!」
だからこうして時間に遅れてしまったのだ。
「この通り、約束の時間には遅れたけどね。でも、1時間くらいなら大丈夫よ。私らって結構歩いているからさ」
響歌がそう言えば、舞もそれに続く。
「そうだよ、全然平気だったよ。伊達に鍛えられてないからね」
確かにそうかもしれない。歩は声にこそ出さなかったが、すぐに納得してしまった。
それに今はそんなことを話している場合ではない。泊まりとはいえ、時間には限りがあるのだ。
「じゃあ、キッチンに案内するね。それと今日はお母さんの調子が悪くて奥で寝ているんだ。だから夕飯は用意できないの。ごめんね」
歩が謝ると、響歌が慌てた。
「夕飯なんて、最初からいらないって。近くには店がいっぱいあるんだから、そこで適当に食べようよ」
舞も響歌と同じ意見だ。
「そうだよ。用意してもらったら、かえって気が引けてしまうよ。気楽にどこかで食べよう」
2人ならそう言ってくれるとは思ったが、歩は実際に聞いて安心した。
「じゃあ、チョコ作りが終わったら、国道沿いのファミレスに行こう。お礼に、今日は私がおごるね」
「えっ、それは申し訳ないよ」
「そうだよ。それだったら、コンビニで適当に買って食べようよ」
2人は遠慮したが、そこは歩が強引に押し通した。
「いいの、今日は私が払う。せっかくここまで来てくれたんだもの。これくらいはさせて欲しい。私の為に細見さんのことで色々動いてもくれたんだから、ここは素直におごられておいて!」
まぁ、歩ちゃんがそういうのなら、いいかな。
今日は素直に甘えておこうか、響ちゃん。
2人は目と目で会話を交わすと、歩の好意に甘えたのだった。