少女達の青春群像           ~舞、その愛~
 やっぱりさっちゃんは、ハッシーのことが好きなんだね。

 でも、卒業も近いのにどうするつもりなんだろう。

 私達にも何も話してくれないし、このまま告白せずにいくんだろうなぁ。

 歩ちゃんがあんなに頑張って訊きだそうとしているんだから、少しは話してくれてもいいのに。

 響ちゃんだって、ハッシーのことなんて、もうまったく、欠片も想っていないのに。

 ついでに言うと黒崎君のことも気にしなくなったのが、私としてはとても不満なんだけどね!

 まっちゃんも宮本さんから何も連絡がこなくなったから、自信を無くして諦めちゃったしなぁ。

 今の娯楽がさっちゃんだけしか無いなんて…あぁ、なんて物足りない。

 それでもあの人が何も言ってこなくなったお陰で、平和な日々が送れていられるのはありがたいことだよね。

 本当にありがたいことに、私の友達の誰もがあの人と一緒のグループにならなかったしさ!

 あの人…中葉と一緒に活動することになったのは橋本のグループだった。橋本は中葉と組むことがわかった後、『また“ぬ”という表示が入った、変なものを作るんじゃないか』と男子達に愚痴っていた。“ぬ”というのは、中葉が愛用している自分用のニックネームみたいなものだ。

 舞と別れてから、中葉は段々とおかしくなっていった。2年の中頃になると、男子も遠慮せず中葉に本音を言ったりしていた。修学旅行前では、男子が集まって旅行のことを話している時に『中葉って、最悪だ』と木原が切り出すと、黒崎も『あぁ、最悪』と相槌をうっていた。同じ時期、木原は4組に入ってきた中葉に『中葉、髪型が変だ』、『中葉は精神年齢が老けているから、髪型も年寄り臭いんだ』と直接言っていたこともある。

 まぁ、おかしいというよりは、暗くなっていった方が正しいのだが。

 響歌の母親も、3年時のクラス写真を見て『この子、どんどんおかしな感じになっているわねぇ』と不思議がっていた。

 自分が彼をおかしくしたのは心苦しいが、それでもどうしようもなかった。何を言っても彼は聞いてくれないのだから。響歌も『あれは仕方がない』と言ってくれている。

 彼に対して怒りの感情はもう沸かなかった。彼とつき合っていた時を思い出すこともある。それでも顔を見ると嫌な気分になるので、やはりもう何もしない方がいいのだろう。

 唯一気がかりなのは卒業式の時だ。響歌の言っていたことが本当だとすると、ダラダラと学校に残らずに早く帰った方がいい。

 よし、卒業式は絶対に早く帰るぞ!

 舞は山田達と雑談をしながら、早くも卒業式の時の為に気合を入れるのだった。
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